わたくし率 イン 歯ー、または世界 川上未映子
主人公は身体のどこに存在しているのか?という問いで始まる。脳ではなくて奥歯に存在すると主人公つまりわたしは思う。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 川上未映子(Kawakami Mieko) 講談社文庫 2010年 |
わたしは歯科医院の助手として就職し、先輩から謂われのない嫌がらせを受けるいじめの日々を送る。ある日、奥歯に穴が開いた青木がやってきてセメントを詰める治療が行われる。
中学生の頃、『雪国』の「トンネルをぬけると雪国だった」の主語は何か?と青木に訊かれて一緒に考えた。わたしはその答えを告げに青木のアパートに出向く。そこには厚化粧の女がいて、立て板に水の大阪弁でまくしたて、泣きながら引き返えさざるをえない。本書のテーマの半分はいじめだ。
奥歯がなくなると、わたし自身がいなくなるかを確かめるようと、無麻酔で奥歯を抜いてもらうことにする。そして口の中が血だらけになるのだった。→人気ブログランキング
大阪弁の独創的な文体で、シュールでアナーキーなストーリーが展開される。第137回芥川賞候補(2007年)になった。→ブログランキングへ
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【川上未映子の作品】
〈小説〉
『愛の夢とか』(2013年 講談社)
『すべて真夜中の恋人たち』(2011年 講談社)
『ヘヴン』(2009年 講談社)→講談社文庫
『乳と卵』(2008年 文藝春秋)→文春文庫
『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(2007年 講談社)→講談社文庫
〈随筆・対談集〉
『安心毛布』(2013年 中央公論新社)
『人生が用意するもの』(2012年 新潮社)
『魔法飛行』(2012年 中央公論新社)
『ぜんぶの後に残るもの』(2011年 新潮社)
『発光地帯』(2011年 中央公論新社)→中公文庫
『夏の入り口、模様の出口』(2010年 新潮社)→『オモロマンティック、ボム!』と改題(新潮社文庫)
『六つの星星 対話集』(2010年 文藝春秋)→文春文庫
『世界クッキー』(2009年 文藝春秋)→文春文庫
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(2006年 ヒヨコ舎)→講談社文庫
〈詩集〉
『水瓶』(2012年 青土社)
『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』 (2008年 青土社)
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