昨夜のカレー、明日のパン 木皿 泉
出だしの3話までは押さえ気味の展開で、4話の『虎尾』からギヤがワンランク上に入り、「さすが本屋大賞2位」と思わせる。それぞれが一つの話として帰結していて、さらに互いにリンクし合ってひとつの物語になっている。
人生訓のような文章が、ところどころに出てきて、なるほどとうなづかせる。
昨夜のカレー、明日のパン 木皿 泉 (Kizara Izumi) 河出書房新社 2013年 |
7年前に夫・一樹を亡くした28歳のテツコと一緒に暮らす天気予報士のギフ(義父)の、ふたりが主人公である。そのふたりの暮らしぶりを描き、隣の引きこもりの女性を描いたのが、第1話の『ムムム』。
引きこもりになってしまったキャビンアテンダントが脱却する話『パワースポット』。テツコがギフに紹介した山ガールとギフが登山にいった話『山ガール』。一樹の3歳年下の従兄弟・虎尾の恋の話『虎尾』。懐が深いんだか抜けているんだか、テツコに求婚した岩田が、詐欺にあった話『魔法のカード』。ギフと妻・夕子の話『夕子』。岩田が同居するギフとテツコの関係を理解する『男子会』。最後の『一樹』は一樹と捨て犬を拾った少女の話で、『昨夜のカレー、明日のパン』がタイトルとなった理由が明かされる。
なぜテツコはギフの家から出ていかないのか、テツコに出ていって欲しくないとギフが考えるのはいいとして、なぜテツコにプロポーズした岩田までもがテツコとギフの関係を崩さない方がいいと考えるのか、そうした人間関係のあやが巧みに描かれている。→人気ブログランキング
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