ラファエル前派展
3月○日(日)
森ビル52階のラファエル前派展(2014年2月2日~4月6日 森美術館)に。
美術展は混みに混んでいて、多数が女性だった。
ラファエル前派の作品には、どこか少女趣味なところがあって、ハーレクイン社のロマンス小説のイメージが浮かぶ。
ラファエル前派とは、イタリア・ルネッサンスのラファエロ以降の規範に縛られた美術からの解放を目指し、それ以前の素朴で真摯な画風を追求した集団のこと。1848年、イギリス王立美術学校の生徒だったダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの若者3人によって結成された。ラファエル前派(Pre-Raphaelite Brotherhood)という日本語は見た目もいいし響きもいいと思った。どういう画家たちのことだろうと、つい興味をそそられる。
当時のイギリスの高名な美術批評家ジョン・ラスキンはラファエル前派を高く評価したから、ラファエル前派は一世を風靡したような感じだ。どの時代も美術批評家が味方につくほど心強いことはない。
グループにはビーナスと呼ばれる女性ジルダがいて、よくある話だけれど、ロセッティとハントはジルダを争奪して仲違いした。
一方、ミレイはラスキンの妻エフィと恋仲になってしまい、相関図は入り組んでいる。
エフィは歳の差があったラスキンと離婚しすぐにミレイと再婚した。
回顧主義のラファエロ前派には次代に引き継がれるべき確固たる芸術理念があったわけではない。1850年代にはグループは消滅している。
彼らは、シェークスピアの物語やアーサー王伝説、キリスト教やギリシャ神話にまつわる題材を選んだ。なかでも、有名なのはシェークスピアのハムレットからとった、ミレイ作のオフィーリア。川に身を投げたオフィーリアを描いたもの。ミレイは背景となる川に何度も出掛け木々や草花をこと細かに写生し背景を描き、ロセッティの妻となるジダルを浴槽に入れてオフィーリアを描いたという。
その緻密さは1800年代前半に実用化された写真に打ち勝とうとするかのようである。ラファエル前派の作品は、絵に込められた作者の意図が直接的で理解しやすい。
夏目漱石は『草枕』の中でこの絵に触れ、オフィーリアを土左衛門と表現して、何であんな不愉快なところを選んだのだろうと書いている。また映画『赤目四十八滝心中未遂』では、寺島しのぶ扮する綾がオフィーリアと同じポーズで川に身を投げるイメージの映像が出てくる。さらに、金鳥蚊取り線香のコマーシャルにカッパの着ぐるみを着たタレントが川を流れるシーンがあった。あれもオフィーリアを真似たのだ。→ブログランキングへ
このあと、上の階でアンディ・フォーホル展が待っているけれど、しばし展望室で休憩しよう。
眼下の東京は雨と靄で霞んでいた。
→【2015.08.18】英国の夢 ラファエル前派展@新潟市美術館
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