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『世界クッキー』川上未映子

世界クッキーというタイトルには、あとがきによると、世界とクッキーを並べてみると言葉同士はどう思うのだろうという、言葉を擬人化したというか詩的というか、著者の独特の感性が込められている。

世界クッキー (文春文庫)
川上未映子(Kawakami Mieko)
文春文庫
2012年5月(←単行本2009年11月) ★★★★★

 

著者は日常のふと気に留めながらも深く考えないで流してしまいそうなことを取り上げて、実はこういうことだったんだよと表現してくれる。
例えば『ホテルの内部』には次のようなくだりが。。
〈ホテルの部屋はいつも不思議な感じがするんだけれども、・・・ホテルというものがそもそも持っている哀しさのようなものが形を変えて、感情をぐらつかせるのです。〉ホテルに泊まると感じていた言葉にできなかったことを、ちゃんと言葉にしてくれて、そんなもんだなと納得させてくれる。
ひと言でぴしゃりと決めるのではなくて、ちょっと長めでじんわりと核心を知らしめるという感じである。このじんわり感が著者の魅力なのだ。なんとなく当たっている、そういう感じである。

巻末の初出一覧をみると、新聞が多く、その他いろいろで、どういう縁があったのかNikonの「My Pctures」にも多く書いている。
坪内逍遥大賞奨励賞(2007年)、芥川賞(2008年)、中原中也賞(2009年)、芸術選奨文部科学大臣新人賞(2010年)と立て続けに賞に輝いた著者の才能をがつんと感じさせてくれる。月並みな表現だが珠玉のエッセイ集である。

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