レッドカーペットで繰り広げられていたこと
今年の米アカデミー賞授賞式のTV放送を見ていて感じたことがあった。
会場に向かうレッドカーペットのところで、4人のインタビュアーが、着飾ったスターたちを待ち構えていてマイクを向ける。インタビュアーが早口に質問を浴びせると、スターはこれまた早口でジョークを交えて陽気に応える。それからお約束の衣装やアクセサリーのブランドを訊ね、終わりというのがインタビューの流れ。このやりとりをどこかで見たことがあるなと思ったら、ゲイ諸氏が出演するTVのバラエティ番組だった。
大げさな身振りや手振りといい、しゃべるテンポといい、気の利いたシャレといい、似ている。洗練されているようでどこか泥臭い、わざとらしくて、約束ごとで流れていくようなやりとりである。スターに上り詰めるには茨の道であっただろう。そこはゲイ諸氏とて同じ、艱難辛苦を乗り越えて手に入れたのが、フルメイクの術と立て板に水の話術だった。引き出しにはジョークがふんだんに入っていて、話の成り行きには臨機応変に対応できる。ゲイ諸氏はいつの間にかハリウッドを身につけていた。
スターたちのファッションは庶民とは何の関係もない事象のように思われがちだが、そうではない。蝶が羽ばたくとはるか彼方で竜巻が起こるバタフライエ・フェクトのように、有形無形でじわじわと庶民にたどり着き、流行となるのだ。
さて、授賞式の司会を務めた俳優でありコメディアンの女性には驚嘆させられた。彼女は、絶対にスカートをはかないという硬い意志がにじみ出たボーイッシュでシックな上下のスーツに身を包み、機転の効いた早口の話術で並み居る大物スターたちをからたったり持ち上げたりして、その度に場内には爆笑が起こった。50歳を少し超えたくらいのその女性をネットで調べると、同性の配偶者が明記されていた。
式の合間には宅配ピザ配達人がピザを届けるオーマイゴッドの演出もあって、蝶たちがてんでばらばらに羽ばたくようなハリウッドの放つものすごいエネルギーに、ただただ脱帽してしまいました。→ブログランキングへ
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