千住博美術館/軽井沢現代美術館
5月○日(月)
軽井沢現代美術館を訪れる前に、国道18号線沿いの千住博美術館へ行った。
駐車場の管理人に現代美術館を訊ねたところ、「知らない」という。長倉という地名だとさらに訊くと、ここも長倉で軽井沢の半分は長倉なんだそうだ。
館内は白いトーンで明るく、順路はない。床は緩やかな高低でうねるっている。
緻密に描かれた滝や桜や崖は、なかなかの力作だと思うのだか、クールすぎて近づきがたい雰囲気がある。
大作目白押しである。
特に、1995年の「第46回ベネチア・ビエンナーレ」で、東洋人初の名誉賞を受賞した「The Fall」(340×1400cm)は、さすがの大迫力だった。
軽井沢千住博美術館
長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
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軽井沢現代美術館をネットで調べると国道18号線から入ったすぐのところにあるのだが、カーナビを入れてもたどり着けなかった。それで、18号沿いにあるセブンイレブンで訊ねると、町立図書館が駅の近くに移転して、現代美術館はその図書館跡だというのだ。
ところが図書館は人の気配のない廃墟。図書館の敷地から出たところで、小さな案内看板を発見し、矢印は急勾配の坂の上の方を指していた。
その坂をギアを下げてウィンウィンとアクセル踏んで登ると、こじんまりとした建物があって、それが軽井沢現代美術館であった
館内はくつろいだ雰囲気で、入り口近くの白い巨大な顔は奈良義知の作品。
そのかぼちゃのようでありペコちゃんのようなオブジェの横に、「写真撮影は可であるが人物を入れること、フラッシュは焚かないこと」との寛大な注意書きがあった。
順路はない。
ここは、現代美術とは一体何ぞやと考えさせる装置になっている。
抽象のなかになにかの意図を表現するのが現代美術であるとすれば、隠喩や、あるいは覆われている向こうにある波動がなんであるのかを感じとることが、現代美術に触れることなのだろう。
そうは言っても、わかりやすい作品がいい。
どういう訳か監視員の女性がいろいろ説明してくれる幸運に恵まれた。草間弥生も奈良義知もいいけれど、最も惹かれたのは、ロッカクアヤコだった。
「子供は皆、芸術家である。問題は、大人になってからも、いかにして芸術家であり続けるかだ」というピカソの言葉を逆行するロッカクアヤコの作品は、子供のようなセンスであっけらかんと表現されている。
「村上隆のように、ビッグヒットになるかもしれないアーティストなんですよ」とのこと。ポップでファンキー、原色でくる色使いのセンスがいい。踊り出したくなるような明るさがある。「指で直接書いてるんですよ」と例の女性が説明してくれた。
2階は山内達雄展をやっていて、暗いことこの上ない作品が並んでいる。ここはざっと目を通しただけで別の部屋に進む。
その部屋には、ルイヴィトンとコラボした村上隆の作品や、ロッカクアヤコのリトグラフや、ミロ風の岡本太郎のリトグラフなどがある。作品には値段がついていて、例の女性が今度は店員になって、それとなく購入を勧めるのだった。この区画は画廊だ。
館をひと回りして1階の薪ストーブが燃えるロビーに戻り、サービスの紅茶をお願いして、備えてある現代美術関連図書をパラパラめくる。アップルティーにクッキーが出てきて、しばし奈良義知の日記を読んだが、アーティストとしての大いなる苦悩の日々が連綿と書かれている。一度は大スランプに陥り、そこから這い上がり今の作風にたどり着いたという。
案内看板のことを受付で訊くと、規制で目立つ看板は立てさせてもらえないそうだ。
18号からの入り口にある焼肉屋に看板があるとのこと。
帰りぎわに焼肉屋を見ると、こぢんまりした看板があった。
軽井沢現代美術館
長野県北佐久郡軽井沢町長倉2052-2
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