« 『キャタピラー』 | トップページ | 『フリーダムランド』 »

「人間は成長しない、肥るだけ」

人は人生の大半をを大人として過ごすわけだけれど、何歳くらいから大人なのか。日本では20歳以上が参政権を持つから、20歳がひとつの目安ではあるけれど、社会的に自立している人を大人とすると、20歳では頼りない。厚労省のニートの定義は「15歳から34歳の若年無業者」、つまり今の日本では34歳までは親元で暮らしてスネをかじっていても、まあ大目に見てやろうというのが、政府の考えということになる。大人の定義として35歳は、いくらなんでも歳をとりすぎに思えるので、30歳くらいが妥当なところではないか。
人生の最後の頃は、ボケたりして、大人と異なるカテゴリーに入ってしまうかもしれないから、こうしてみると、人生のうちでちゃんとした大人として過ごす期間がそう長くないことに、ちょっと戸惑う。

ところで「大人気ない」とは、成熟していない考え方や行動を批判する言葉であって、「大人げない」事件としては東京都議会のヤジ事件がある。「大人げない」よりは「大人として情けない」の方が当たっているかもしれない。最近見たジョーク連発のコメディ映画『ディボース・ショウ』(2003年)でのジョージ・クルーニーのセリフ「人間は成長しない、肥るだけ」は、「大人げない」とか「大人として情けない」を象徴する説得力のあるフレーズだ。

6月18日の東京都議会において、質問に立った女性議員に対し、自民党議員が「結婚しろ」とか「子供を埋めないのか」などのヤジを飛ばした事件である。マスコミの追求に、数日後ヤジの犯人として自民党男性議員が名乗り出て件の女性議員に謝罪したものの、女性議員の応対にぎこちないところがあった。

女性議員は議員になる前にテレビ番組に出ていて、「恋人と別れるとき慰謝料として1500万円もらってイギリスに留学した」とか「恋人に妊娠したと嘘をついたことがある」とか、自らの灰色の過去を語り、ほかの出演者はのけぞったそうだ。
女性議員がヤジ犯の追求にいまひとつ歯切れが悪いと感じられたのは、この灰色の過去があったからだろう。

謝罪した議員の事務所に生卵がぶつけられたとか、ヤジった議員の特定を求める署名が7万件集まったとか、大阪市長が「自民は最低」と会見で言ったとか、民主党がほかのヤジ議員を追求する声明を出したとか、外野は盛り上がっている。
しかし、すでに都議会の会期が終わり、夏眠の状態に入っている。
そもそも政治は政治家が動かしているように見えて、その実、筋書きを作っているのはすべて官僚の諸氏なのである。やっと議会が終わった彼らにとって、今は議会の間に政治家からこき使われた分、議会のことなどすっかり忘れていたいのだ。ヤジ問題を追求する頼みはマスコミだけである。

そんなわけで、ヤジられた女性議員に憐憫しヤジ議員に憤りを感じた国民は、これから週刊誌に掲載される彼女の灰色の過去を読んで憤りの行き場をなくしてしまうだろう。そして事件は風化する。

« 『キャタピラー』 | トップページ | 『フリーダムランド』 »

エッセイ」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「人間は成長しない、肥るだけ」:

« 『キャタピラー』 | トップページ | 『フリーダムランド』 »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ