キャタピラー
江戸川乱歩の短編『芋虫』(『江戸川乱歩傑作選』(新潮文庫)に収録)とドルトン・トランボの小説『ジョニーは戦場に行った』(1971年映画化)を下敷きにしているとのこと。戦争に翻弄される若い夫婦の物語である。
本作で主演の夫婦を演じた寺島しのぶと大西信満は、『赤目四十八滝心中未遂』(2003年 荒戸源次郎監督)でも共演している。
ベルリン国際映画祭(2010年)で、寺島しのぶが最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞している。
![]() Caterpillar 監督:若松孝二 脚本:黒沢久子/出口出 音楽:サリー久保田/岡田ユミ 日本 2010年 84分 |
1940年、中国から重傷を負って帰国した黒川久蔵(大西信満)は、右の顔面はケロイドで引きつり、両腕両脚が切断され耳は聞こえず言葉を発っすることができない。新聞は「不死身の軍神」と書きたてた。
村では生き神様と崇め奉られ、目の前で手を合わせて拝む者さえいる。
そんな夫の姿に愕然とする妻シゲ子(寺島しのぶ)であるが、銃後を守る女性たちの鑑として、久蔵への献身的な世話を求められるのである。
シゲ子は、軍服に勲章をつけた久蔵をリアカーに乗せて村を巡回し、村人たちが久蔵に手を合わせたり尊敬の眼差しを投げかけるたりすることを誇らしく思うのである。また出征式に出ることを拒んだ久蔵の代わりに、シゲ子は割烹着に勲章をつけて参列する。それも誇らしいい気がするのであった。食って排泄して寝てシゲ子の体を求めるだけと、シゲ子はたびたび耳が聞こえない久蔵に語りかける。
出征する前に久蔵はシゲ子に暴力を振るっていた。一方、久蔵は戦地で女を強姦したことを夢でくり返し見るのだった。
そしてあるとき、我が儘を通そうとする久蔵に腹を立てたシゲ子は暴力を振った。
1945年8月、クマ(篠原勝之)が「戦争が終わった、バンザイ」と野良仕事をしているシゲ子に告げると、シゲ子は笑顔で応える。
その頃、自ら命を絶とうとする久蔵は、芋虫のように匍匐して家を出て庭の池へ向かっていた。→人気ブログランキング
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