イニシエーション・ラブ 乾くるみ
大学4年生の主人公鈴木は社会人となり、世渡りの術を覚え純真さが失われ、徐々にふてぶてしくなっていく。その変貌ぶりが本書のテーマである。
2004年の発刊の単行本の文庫化。本書はじわじわ売れて100万部を突破したという。
鈴木は合コンで知り合った歯科衛生士の繭子に好意を抱き交際をはじめる。繭子のアドバイスに従って、眼鏡をコンタクトに代え、服を新調し、車の免許を取るために自動車学校に通うようになり、どん臭かった鈴木は変貌を遂げていく。
イニシエーション・ラブ 乾くるみ(Inui Krumi) 文春文庫 2007年 |
静岡市内の会社に就職した鈴木と繭子とのあいだは親密になっていく。ふたりの共通の趣味は読書。本を貸したり借りたりする。
静岡市での社会人としての生活に慣れてきた頃、鈴木に幹部候補生として東京への転勤の辞令が出る。このとき、彼には将来の出世よりも繭子との関係の方が重要に思えたのである。
東京で会社の寮に入った鈴木は週末には車で東京から静岡に通い、「♪都会の絵の具に染まらないで帰って♪」という『木綿のハンカチーフ』に込められた繭子の願いに応えようと努力するのだが、過労と睡眠不足で食欲がなくなり体調を崩してしまう。そして鈴木は静岡に通う回数を減らさざるを得なくなる。
東京では、石丸という美人の新入社員が鈴木にモーションをかけてくるが、繭子の手前はじめのうちは断る。しかし、ドライブに誘ってくれるようにとの石丸の誘いを受け入れてしまうのだ。
鈴木が、幼い顔つきでやせ型の繭子から、まるで女優のようで頭もいい石丸に心移りするのは、時間の問題だった。彼は繭子との恋愛は通過儀礼だったと思うのだが。。→人気ブログランキング
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