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店屋物屋

最近あまり使われなくなった言葉に店屋物がある。古い刑事物のTVドラマや映画の取り調べ室で、刑事が容疑者にタバコを勧め、そのあとカツ丼を目の前において、「食うか?」と容疑者をほろりとさせ自供にもっていくお馴染みのシーンで、店屋物は活躍していた。

店屋物屋のメニューには、カツ丼や親子丼などの丼物のほかに、そばやうどんが各種あり、さらにカレーライスがあり、驚くことにラーメンやチャーシュウメンまであり、冷やし中華も夏季限定で出すくらい、メニューはバリエーションに富んでいる。豚肉の卵とじ丼に明治を彷彿とさせる開化丼と名づけている店もある。ほとんどは家族ないしは同族経営であり、出前もやっている。そば屋と名乗るところも多いが、そば屋のイメージは、そばと種物各種と丼物が数種くらいのメニューで、ラーメンを出すとなると、もはやそば屋ではなく店屋物屋と呼ぶのがふさわしいと思う。

日本の近代食堂史に大いなる足跡を残す店屋物屋だが、今や絶滅の危機に瀕している。理由は、商売敵である各ジャンルの外食チェーン店の急速な広がりと、店屋物屋自体の世代交代がうまくいかないことにある。忙しく労働時間が長く、将来どうなるかわからない店屋物屋を引き継ぐ若者がいないからだ。
ところが、今の世の中どこに落とし穴があるかわからない。隆盛を誇っていた外食チェーン店が、最近は従業員の確保がままならないことで、首都圏では軒並み営業時間の短縮や閉店に追い込まれる事態になっている。同族経営でこつこつやってきた店屋物屋に、再び光が当たる未来がくるかもしれない。

海老家
新潟市中央区上大川前通10-1876
11:00~15:00 17:00~20:00 日曜 

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さて、店屋物屋の純正見本のような海老家は、上大川前通の下の風間小路にある。白地に真紅の海老が描かれ海老家と黒字で書かれた夏季用の暖簾は、ポップアートのようである。ちなみに冬季用は紺地に白字で、海老はもちろん赤である。店内は4人掛けテーブルが4つ、計16席のキャパシティーであるが、8名が入れば満席と感じるくらい狭い。
メニューは店屋物屋の王道をいくラインナップである。ここのカツ丼は新潟には珍しいソース味で、少し甘からい醤油味にソースの酸味が混じったタレが染みたタレカツ丼は人気である。また、セットメニューの麺つき丼があり、例えば、天ぷらそばとミニカレー丼の1.5の世界を堪能できる。もちろん出前もこなす。

店内には、一枚の色紙がさりげなく飾られていて、それは椎名誠のもの。
訊けば6~7年前に数人で訪れ、作家は天ぷらそばを食べたという。今までに2回訪れたそうだから、気に入ったのだろう。にもかかわらず、全国各地の麺を高校野球にみたてて競わせた『すすれ!麺の甲子園』で、海老家について触れていないのは残念である。
ちなみに新潟からのエントリーは、万代バスセンターの立喰いうどん、みかづきのイタリアン、天龍と三吉屋のあっさりラーメン、長岡小嶋屋のへぎそばである。新潟を代表する麺のラインナップとして疑問が残ったが、よくよく考えれば新潟がうどん後進県であることをお見通しの的確な選定であった。
それはさておき、海老家の海老天は新潟名物の南蛮海老を多数尾使っていて、尻尾を気にせず丸ごといける。

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