未来型サバイバル音楽論 津田大介×牧村 憲
CDが売れなくなっている。ピーク時の半分になったそうだ(2010年)。〈携帯電話やDVD、インターネットなどの普及によりコンテンツ市場自体が多様化したことで消費者の娯楽も多様化し、相対的に消費者の中でコンテンツ消費に占められる「音楽」の割合が下がったという考え方です。〉というのが、CDが売れなくなった理由だという。
未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか 津田大介×牧村憲一 中公新書ラクレ 2010年 |
音楽界の従来型ビジネスモデルが崩壊していくなか、将来の音楽業界はどのようになるのかが本書のテーマである。
レコードが生産されなくなったように、CDもいずれは同じ運命をたどると予測される。
著者であるふたりは、すでにCDから直接曲を聴くことがほとんどないと言っている。
リッピング(楽曲をMP3形式ファイルに変換すること)して iTunes を経て聴くことが、あたり前になっている。
すでに、CDは音楽をCDショップからあるいは通販サイトから自宅に運ぶ、単なる媒体になっている。
CDが売れなくなっても、人々は音楽を聴くことを止めたわけではない。音楽を入手する方法が、多様化しているのだという。
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本書に紹介されている新しい試みを、以下に列挙する。
(1)ミュージシャンがCDを直販する
まつきあゆむは、10年1月に『1億円レコード』というタイトルのアルバムをリリースした。
銀行口座に支払いすると、ファイル転送サービスのURLがメールで送られてきて、そこからファイルをダウンロードすれば聴くことができる。
このアルバムをプロモーションするために、ツイッターやユーストリームを利用した。
(2)音楽業界とボーカロイドを接続
07年8月に、パソコン上で女性の声を人工的に合成して任意の歌詞で「歌わせる」ことができる、パソコン用音楽作成ソフト「初音(はつね)ミク」がヤマハから発売された。同年12月小林オニキスは、初音ミクを使用したオリジナル局『サイハテ』をニコニコ動画に投稿したところ、大ヒットした。その後ほかの歌手が、『サイハテ』のカバーヴァージョンをメジャーレーベルからリリースしている。
(3)新しいプロデューサー像を模索
島野聡はツイッターと自らの音楽活動をリンクさせ、ほかのミュージシャンと交流を深めたり、ユーストリームを使ってリスナーやミュージシャンとコミニューケーションしながらプロデュースの方法を模索している。
(4)ユーストリームで公開レコーディング
10年4月、向谷実は中西圭三とともにわずか3日間でレコーディングからトラックダウン、マスタリングに至る過程をユーストリームで前編生中継して、完成した楽曲を即座に音楽配信サイトで販売した。
(5)アーティストが自立できる環境を
七尾旅人は、10年6月に「DIY STARS」という音楽配信プラットフォームをプロデュースした。このシステムを、アーティストが自分のウェブサイトに導入すると、デジタルファイルの販売機能を組み込むことができる(2010年12月)。→人気ブログランキング
→『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 』井上智洋 2016年
→『未来型サバイバル音楽論』津田大介×牧村 憲 中公新書ラクレ 2010年
→『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』梅田望夫 ちくま新書 2006年
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