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『北京からきた男』ヘニング・マンケル

スウェーデンの寒村で19名が惨殺される。
被害者の中にすでに亡くなった母親の養父母がいたことで、女性裁判官ビルギッタは事件と関わることになる。ビルギッタは事件が起こった家で古い手紙の束を発見する。それは100年以上前に、LAという男がアメリカのネヴァダ州から家族に宛てて送った手紙であった。
彼女は、その手紙や現場に落ちていた赤いリボンをもとに独自の捜査を行い、犯人は中国人であると推理するに至るのである。

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2014年7月 ★★★★★

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話は135年前に飛ぶ。
ワン・サンは、中国で拉致され船に乗せられアメリカに連れてこられ、ネヴァダ州で鉄道建設の仕事に従事させられた。現場監督のLAは北ヨーロッパから来た白人で、中国人や黒人たちを見下し奴隷のようにこき使った。虐待と過酷な労働と劣悪な生活環境に耐え兼ねて、多数の人間が命を落としていった。
しかしサンは生き残り中国に舞い戻り、ネヴァダでの過酷な日々を日記の形で書き残したのである。

話は、現在(2006年)の北京に戻る。
サンの子孫ヤ・ルーは、日記に綴られたサンの怨念を晴らすため復讐を誓っていた。
中国は急速に貧富の格差が広がり過ぎて、かつての毛沢東革命のような革命がいつ起きても不思議ではない状況にある。膨大な人口を減らし頻発する人民暴動を鎮静させる奇策を、ルーは為政者たちに進言した。ルーは中国政府の政策に影響を及ぼすほどの影の実力者となっていた。そして、ルーが同行する調査団は、アフリカのモザンビークへ向かうのである。

大学生の頃、革命を信じ毛沢東に心酔していたビルギッタは、学生時代の友人であり中国研究家のカーリンに誘われ北京に向かう。こうして、ビルギッタは事件の渦中に自ら飛び込んで行くのである。

著者の中国に対する思いはビルギッタやカーリンを通して綴られている。現代の中国がいびつな発展を遂げているとはいえ、著者はかつて憧れた毛沢東が果たした人民革命にシンパシーを感じているのである。

スウェーデン、アメリカ、中国、アフリカ、イギリスを舞台とし、しかも約130年前の手紙と日記が殺人事件につながるという、著者だからこそ書き得る、時空を超えた巨大なスケールの大傑作となっている。

ビルギッタの4人子供は家を出てしまい、かつて弁護士であり、いまは列車の運転手をしている夫と二人暮らし。その夫との間は、どこかしっくりしていない。こなさなければならない裁判の案件に追いまくられ、体調がすぐれない。他の登場人物たちも、それぞれが悩みを抱えた人間として描かれていて、そうした著者の描写の匠さに単なるミステリにとどまらない物語の広がりと深さが感じられるのである。→ブログランキングへ

2016.03.19『霜の降りる前に
2014.09.19『北京からきた男
2013.04.10『ファイアーウォール』 
2012.01.02『リガの犬たち
2011.12.20『背後の足音

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