アンディ・ウォーホルを撃った女
1968年、アンディ・ウォーホルを銃で撃ち重症を負わせたヴァレリー・ソラナスは、自らの考えに凝り固まっていた。ソラナスは不遇な少女時代を過ごし、やがてレスビアンに目覚めた。独自に「男性切り刻み協会(The Society of Cutting Up Men)」を組織し『SCUM宣言』を自費出版して、レスビアンたちに男性蔑視の過激な思想を呼びかけたが、世間の反応は冷たかった。「男性切り刻み協会」とはなんとも凄まじいネーミングである。
I SHOT ANDY WARHOL / アンディ・ウォーホルを撃った女 I Shot Andy Warhol 監督:メアリー・ハロン 脚本:メアリー・ハロン/ダニエル・ミナハン 音楽:ジョン・ケイル アメリカ 1996年 105分 |
当時、時代のカリスマであったウォーホルなら自分の考えを受け入れてくれると思った彼女は、ウォーホルが主催するファクトリーに出入りするようになる。ソラナスはウォーホルの男も女も超越したような中性的なところに、自分を理解してくれそうな印象を持ったのかもしれない。
定職に就いていないソラナスは、男に体を売って生活費を稼がなければならない悲惨な状況にあった。
人の出入りの多いファクトリーでは、ウォーホルのお気に入りのファッショナブルで才色兼備の女性たちがいて、作品製作を担う男性と女性がいて、その他の取り巻きがいた。男性マネジャーには、ウォーホルに有益でない人物が必要以上に彼に近づかないようにガードするという役目もあった。
この映画では省略されているが、ウォーホルはソラナスをアングラ映画に出演させている。
そんなこともあり、ソラナスにはウォーホルが自分の考えに賛同したかに思えた。しかし、マネージャーに辛辣な言葉を浴びせられ、実際はウォーホルが彼女を鼻にもかけていなかったとわかり、彼女は逆恨みし犯行に及んだのだった。
本作も、ウォーホルと恋愛関係にあったイーディ・セジウィックを描いた『ファクトリーガール』(2006年)も、ウォーホルを冷たい人物として描いている。実際の映像で見たウォーホルには、例えばかつてTDKビデオテープのコマーシャルに出ていたが、そのような冷たさと中性的なもの、それとソラナスにも通じるエキセントリックなものが感じられるのである。→人気ブログランキング
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