郵便配達は二度ベルを鳴らす ジェームズ・M・ケイン
1934年発表されたジェームズ・M・ケインの初の作品。邦訳6回、映画化7回という世界的ベストセラーのノワール小説である。このたび、新訳が、ケインの遺作『カクテル・ウェイトレス』の翻訳本と期を同じくして出版された。
郵便配達は二度ベルを鳴らす ジェームズ・M・ケイン(田口俊樹訳) 新潮文庫 2014年 |
刑務所に出入りをくりかえす文無しのフランクは、カリフォルニアの安食堂に転がり込む。ギリシャ人のニックと妻コーラが経営する食堂には、ガソリンスタンドとモーテルが併設されている。フランクはお人よしのニックに気に入られ、修理屋として住み込むことになり、コーラとは深い仲になってしまう。
コーラは田舎の高校の美人コンテストで優勝してロサンゼルスに出てきて、最初はちやほやされたものの、田舎娘の行き着くところは結局は食堂のウェイトレスだった。そして、ある時ニックに言い寄られて結婚した。
コーラはチビで太っちょのニックに我慢できなくなったという。コーラは夫殺しをフランクに持ちかける。
1度目は失敗するものの、交通事故死を偽装した2度目は成功する。
ふたりが殺人容疑で逮捕されるのは想定内だった。ところが、警察の尋問に苦戦すると思いきや、辣腕の弁護士のおかげで、起訴をまぬがれふたりとも釈放される。しかも保険金1万ドルを手にするのである。
コーラは引き続き食堂を経営して地道に生きて行こうとするが、フランクは食堂を売って旅に出ようと提案する。この意見の違いが結末の悲劇を招くのである。
1934年発刊であるが、古さはまったく感じなかった。
洗練されているストーリーとは言い難いが、その泥臭さが魅力なのだ。
ところでタイトルの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」であるが、郵便配達員がどこかで絡んでくるだろうと読み進むが、登場せずに物語は終わってしまう。解説によると、友人との会話のなかで、友人が使ったこのフレーズを著者が気に入りタイトルに採用したという。→人気ブログランキング
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『カクテル・ウェイトレス』ジェームズ・M・ケイン 新潮文庫 2014年
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』ジェームズ・M・ケイン 新潮文庫 2014年
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