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11/22/63 スティーヴン・キング

本書は、『このミステリーがすごい 2014年度版』海外部門の1位に輝いた。
タイトルは、ケネディ大統領が暗殺された日付である。
2008年、主人公の高校教師ジェイクは、友人のアルから、過去の世界に行ってアルの悲願であるケネディ大統領暗殺の阻止を託される。アルは肺がんを患っていて、余命いくばくもないのである。


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11/22/63

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スティーヴン・キング (白石 朗訳)
文藝春秋
2013年9月

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11/22/63 下
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スティーヴン・キング
文藝春秋

オズワルドをどうにかすれば、ケネディは暗殺されないだろうとアルはいう。ケネディ司法長官も死なずに済んだかもしれない。ベトナム戦争もあそこまで泥沼化せずに終結したかもしれない。マーチン・ルーサー・キングも暗殺されなかったと、アルはジェイクに熱く語る。アルは何回か過去に行って、オズワルドの動向をつぶさに調べノートにしたためていて、それをジェイクに譲り渡した。そしてジェイクは、穴の向こうの過去の世界に足を踏み入れる。
果たしてオズワルドはケネディ暗殺の真犯人なのか。またオズワルドをどうにかしたら、バタフライ効果によってもっと悲惨なことが起きるのではないか。
本書は一人称で書かれているので、読者は主人公の目線を通して、およそ50年前の少しばかり原始的な良きアメリカの日常に触れるのである。

スティーヴン・キングは、モダン・ホラーの帝王あるいは巨匠と呼ばれている。おそらく現代人の抱く不安や恐怖を書いたら、エンターテイメント性においてキングの右に出る者はいないだろう。それが証拠に、キングの作品を原作とする映画は、『キャリー』(1976年、99年、2013年)、『シャイニング』(1980年)、『スタンド・バイ・ミー』(1986年)、『ミザリー』(1990年)、『ショーシャンクの空に』(1994年)、『シークレット・ウインドウ』(2004年)、『1408号室』(2007年)、これらのほかに30本以上あるのだから、ストリーテーラーとしてのキングの才能に脱帽せざるを得ない。

アメリカ発の小説や映画では、いい大人が卑猥な言葉をとっさに発したり喧嘩腰の会話で連発することがあるが、本書も例外ではない。幼児が「お尻」といって笑い転げる様と変わらない。幼児期に卑猥な言葉を使わせない、アメリカにはびこる、愛しているといいつつ自立しなさいと突き放す子育て法の副作用ではないかと思う。
キングは『書くことについて』(小学館文庫)で、自らの文章について、汚い言葉を多く使っていることを認めている。公序良俗を盾に彼の著作を不道徳図書として槍玉にあげようとする過激な良識派と、やりあう覚悟があると書いている。キングいわく、小説の会話は普段使っている言葉をそのまま書くこと。ハンマーで誤って親指を叩いたら、誰だって「糞ったれ」というはずで、それはキリスト教徒であろうと異教徒であろうと変わらないとしている。私なら「痛えっ」とはいうが、「糞ったれ」とはいわないと思う。
こうした屁理屈も、膝を打つ卓絶なフレーズも、ピンと来ない比喩もうならせる比喩も、良識派の批判をものともしない姿勢もひっくるめて、キングの魅力だと思う。

それはともかく、ケネディが西側諸国の多くの人々にとって輝く星だった1963年、主人公はやがて惨劇が起こかもしれない町ダラスで、著者がいう「反撃してくる頑固な過去」に挑むのである。→人気ブログランキング

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