芥川症
著者は芥川龍之介の短編に医療や介護に関連するテーマがあることに気づき、「想を得て」、短編の連作を書いたという。芥川龍之介は『古今物語集』から「想を得て」いくつかの短編を書いた。「想を得た」とはパクったと同じ意味であると著者はざっくばらんに書いている。
原作を踏まえ一捻りもふた捻りもしているところに著者の才気が感じられる。
![]() 久坂部 羊 新潮社 2014年 |
「病院の中」
60歳の父が死ぬ。死因が腑に落ちない息子は主治医や看護師に詰めよるが、藪の中ように埒があかなかった。ついには病理解剖が行われることになった。そして結果は藪蛇となる。
「他生門」
ぐうたらな男が米国で心臓移植を受け成功した。手術のための募金を行ったNPOの人びとは、男がまっとうに生きることを強要する。男はそれに反発し、自殺を企てるが思い通りに死ねない。現実はぐうたらな男に冷酷であった。
「耳」
耳フェチの新進の小説家が、処女作を凌駕する2作目を生み出そうとして引き起こされるホラーな事件。
「クモの意図」
落語好きの新米看護師が堅物主任看護師と組んだ準夜勤務のドタバタな顛末。
『極楽変』
売れない現代造形作家を後援する医師の恐ろしい企て。
「バナナ粥」
在宅介護をする息子と偏屈な父親の確執を氷解させたものは。
「或利口の一生」
外科医の生涯をショートショートの連作で綴る。→人気ブログランキング
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