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『33年後のなんとなく、クリスタル』田中康夫

本書のカバーや帯には、賛辞もあればどちらともつかないコメントものっている。
その中で最も納得がいくのは、斎藤美奈子の〈彼は全然懲りていない。激動の同時代を生きた同世代の富国裕民に贈る「"自伝的"風俗」小説。〉である。著者の半ハンパない数の注釈をつける癖は前作と変わっていない。
ちなみに富国裕民とは、著者の政治家であった祖父が、東条英機の富国強兵に抗して掲げたキャッチフレーズである。

33年後のなんとなく、クリスタル

33年後のなんとなく、クリスタル

posted with amazlet at 15.02.23
田中 康夫(Tanaka Yasuo
河出書房新社
2014年11月

著者自身と思われる主人公のヤスオが、犬の散歩中に、由利の友人である江美子と再会するところから物語は始まる。
由利は『なんとなく、クリスタル』の主人公で、33年経ったから54歳になった勘定。ヤスオはかつて江美子とも由利とも関係があった。

ヤスオは江美子や由利たちの女子会に招待され出席すべきかどうか悩むが、断る理由がみつからないので出席する。
眺めのいいマンションのリビングで、ケータリングのイタリアンを舌鼓を打ち、シャンペンだのワインだのを飲みながら、ヤスオは薀蓄を垂れ、あるいは女子たちの話に聞き耳を立てて、あれこれ妄想する。

卒業後、由利はフランス系の化粧品会社に勤め、学生時代に付き合っていた男と結婚したが別れた。
今は会社を立ち上げ、子宮頸がんのワクチン接種の啓発にかかわったり、アフリカの人々に眼鏡を供給しようと南アフリカへの出張を控えている。

阪神淡路大震災のときに自転車で被災地を駆け回リボランティア活動をしたことや、知事時代の「脱ダム宣言」や、自ら受けた手術のことなど、著者が実際に経験したこと書かれている。
「出来る時に出来る事を出来る人が出来る場で出来る限り」とか「微力だけれど無力じゃない」という心構えで、右肩上がりでないこれからの日本を生きていくのがいいという。ふたつのフレーズは、韻を踏んでいて聞こえはいいが中身がない。

黄昏時に、ヤスオはサロンで髪を染めカットをしてもらう。同じ時間帯に妻が付き添って愛犬もサロンでシャンプーとカットをしてもらい、フォークソングの『神田川』のように、頃合をみはからって落ち合う予定というしょうもないところで終わる。
懲りていない。

→【2015.02.17】『なんとなく、クリスタル

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