モダン The Modern 原田マハ
MoMA(ニューヨーク現代美術館)に関わる人物を主人公にした5つの短編集。
キュレーターでもある著者のアートに対する造詣の深さが、各作品に滲み出ている。
モダン The Modern 原田 マハ 文藝春秋 2015年 |
『中断された展覧会の記憶』
MoMAの理事会は、東日本大震災の原発事故の後、ふくしま近代美術館に展示されている『クリスチーナの世界』の引き上げを決定する。杏子ハワードは「作品にはなんの損傷はない」と報告が届いているにもかかわらず引き上げるのは、放射能に対する偏見に他ならないと思った。杏子は福島に向かう。
『ロックフェラー・ギャラリーの幽霊』
監視員のスコットが注意を払っているのは作品ではなく、作品を見ている人(ヴィジター)たちである。作品に悪さをしないかと見張るのが仕事である。そして、若い男のヴィジターから声をかけられる。
『私の好きなマシン』
ジュリアン・トンプソンは8歳のときに、MoMAで開かれたマシンアート展で展示されていたベアリングが大好きになった。人目につかずに役に立っていて美しいものに惹かれるようになり、工業デザイナーの職に就いた。
あるとき、後に世界で爆発的に出回るパーソナルコンピュータのデザインを依頼された。
『新しい出口』
親友でライバルの同僚を、WTC(ワールドトレードセンター)にデリバリーを頼んだばっかりに、死なせてしまった。それからアシスタント・キュレーターのローラはPTSDになった。
ローラは、自らと亡くなった友人が深く関わった「ピカソ・マチス展」を閲覧することで、新しい出口を見つける。
『あえてよかった』
日本からMoMAに1年間の研修にきている森川麻実はつい謝ってしまう。28歳のシングルマザー・パティに、その癖を指摘された。
デザインストアのショーウインドウに飾られた箸が交差してに並べられていることに違和感があるとパティに伝えたが、理解してもらえたかどうか。→人気ブログランキング
→【2013.10.04】『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』長谷川祐子(集英社新書)
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