若冲 澤田瞳子
「異能の画家」伊藤若冲(1716年~1800年)の半生を描いた歴史小説。
腹違いの妹お志乃は、顔料を溶いたり墨をすったり、若冲の身の回りの世話をやいた。そのお志乃の目で描かれている。
第153回直木賞(2015年7月)の候補作。
若冲 澤田 瞳子(Sawada Touko) 文藝春秋 2015年 |
源左衛門(伊藤若冲)は、京・錦高倉の青物市場に店を構える「桝屋」の4代目店主。
源左衛門は、日がな一日絵を描いていて仕事にさっぱり身が入らない。源左衛門には絵を描いて金を儲けようという発想がない。若旦那ゆえ高価な顔料をふんだんに使っていた。
店を切り盛りしている母親とふたりの弟は、絵しか興味のない源左衛門に愛想をつかしている。
結婚して2年目に妻のお三輪が蔵で首を吊って死んだ。8年前のことである。
源左衛門は、お三輪をかばえなかった不甲斐なさを悔やみ、妻への懺悔の気持ちからいっそう絵にのめり込むようになった。
三輪の弟弁蔵は、姑にいびられ源左衛門に大事にされずに姉は死を選ばざるをえなかったと思っている。
若冲は、鹿苑寺大書院障壁画の製作を依頼され一旦は固辞したものの、悩みぬいた末、不吉な植物とされる芭蕉を描くことで引き受けることにした。それを機に若沖は客の求めに応じる絵も手掛けるようになった。
著者は、弁蔵の怨念が若冲を奮い立たせ、大胆で緻密な奇想の作品を描かせたという設定でストーリーを作り上げている。
京を舞台に、若冲と同時代に活躍した、池大雅、円山応挙、与謝蕪村、谷文晁、市川君圭ら画師たちとの関わりを大胆な切り口で描いた傑作である。→人気ブログランキング
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