長野温泉 嵐溪荘
5月○○日(SAT SUN)→
高速の三条燕インターを降りて、渋滞する三条市街を抜け国道289号に入り、県道に曲がり、さらに山の方に進み長野温泉嵐溪荘にたどり着いた。
カーナビがなければ迷いそうなところだ。
いかにも古い温泉宿の趣でテンポがゆったりしている。部屋の窓からは、護岸された守門川や切り立った山肌が見え、郭公や蜩の鳴き声が聞こえた。
ひと風呂浴びると、そろそろ宴会が始まる時刻になった。
大広間におよそ40名がお膳の前に座り、数名のあいさつが終わる頃に、女将が現れた。
薄い色の和服に身を包み髪をアップに決めた女将が口上を述べた。
「このあたりは、かつては海で数千年前の地殻変動で陸になった」とか。「だから温泉は塩泉で肌がすべすべになります」とのこと。
女将の後ろには、タイトスカートに身を包んだ5人のコンパニオンが正座していて、女将と同じに三つ指をついてお辞儀をした。
とんでもなく違和感があったが、それはアルコールが入ると気にならなくなった。
宴会のメニューは、これでもかの山菜尽くしと、鯉の洗いとイワナの塩焼き、さらに和牛のステーキがついた。
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なにしろ10時半に寝たものだから、4時半に目が覚めた。風呂に行くと露天風呂に先客がひとりいて、外は雨が降っていた。誰もいない湯船にどっぷりつかって、少ししょっぱいお湯を口に入れた。湯の注ぎ口には、「湯を沸かして巡回しているので飲まないでください」の注意書きがあった。口を濯げば大事にならないだろう。
部屋に戻ると、まだ5時10分。ひとりは風呂へ行っていて、ふたりは寝息を立てて熟睡中である。予定表を見たら、なんと朝食ははるか未来の8時だった。
とりあえず部屋に備え付けの緑茶を入れて、ずずっとすすった。
布団を敷くために隅に寄せられたテーブルの上には、茶色の温泉まんじゅうが2個あるが、ここは断固手を出さないことにして、緑茶を3杯飲んで空腹を紛らわした。
出てくるときに、書店で購入した『鹿の王・下』をめくりながら時間をつぶした。
運の悪いことに、ファンタジー小説なのにやたら食べ物の描写が多い。
7時40分頃になると部屋の電話器がチリチリチリと遠慮がちに鳴り、「すわ何事」と受話器を取ると、「お食事の準備が出来ましたので、昨夜の宴会場にお越し下さい」との吉報だった。
朝食はご覧のとおり。
給仕の仲居さんの「ご飯のお代わり、いかがですか」を、断腸の思いで断ったのが正解だった。
何しろ量が多い。今までホテルの朝食バイキングや旅館のお櫃付き朝食で、再三食べ過ぎて痛い目にあってきたので、ちょっと成長したのだ。
なお、山菜の直売所は帰り道に3カ所あるが、山菜の時期は過ぎているという。
秘湯にカテゴラズされる温泉宿に求められるのは、「鄙びている」こと、「お湯にありがたみがある」こと、「できる限り和風である」こと、「料理に地物の食材がふんだんに使われ、しかも旨い」こと、「親切だが過干渉でない」こと、さらに「快適である」ことなどだが、嵐溪荘はこれらの項目をクリアしていた。
嵐渓荘
新潟県三条市長野1450
0256-47-2211
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