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2015年7月

2015年7月23日 (木)

大いなる不満 セス・フリード

それぞれが、意表を突く設定だから、つじつまが合わなくなりはしないかと不安を抱かせるが、気づけばずるずると著者ならではの世界に引きづり込まれている。そして最後に宙ぶらりんのままに放り出されたりする。
長編をものにしてもらいたい輝ける才能だ。
Image_20201125100801大いなる不満
セス・フリード/藤井 光訳
新潮社
2014年

「ロウカ発見」発見されたミイラをめぐり、研究室内の人間関係は奇妙に変化する。
「フロスト・マウンテン・ピクニックの虐殺」数多くの死者を出すピクニックが毎年繰り返される。
「ハーレムでの生活」王と多数の美女がいるハーレムに暮らす醜い男の話。
「格子縞の僕たち」火山口に投げ入れられるカプセルにサルを入れるのが仕事。
「征服者の惨めさ」スペインの南米侵略、征服者の悲哀を描く。
「大いなる不満」エデンの園で、猫がオウムをライオンがクジャクや子羊が本能をあらわにできないでいる。
「包囲戦」悲惨さがエスカレートしていく包囲戦を描く。
「フランス人」20年前、中1の劇で演じたフランス人役が新聞に載ったこと。
「諦めて死ぬ」親族が事故で次々死んでいく青年の話。
「筆写僧の嘆き」古英語詩のでたらめ極まりない写本を、くり返す僧たち。
「微生物集」ー若き科学者のための新種生物案内 微生物に見える存在の強引さと情けなさ。→人気ブログランキング

2015年7月15日 (水)

夢の守り人 上橋菜穂子

『守り人』シリーズ第3弾。
本作では、新ヨゴ皇国で当代最高の呪術師とされるトロガイ婆の過去が明らかにされる。
故郷のカンバル王国から新ヨゴ皇国に戻ってきたバルサは、青霧山脈の山中で、奴隷狩人に追われている歌い手の〈木霊の想い人〉ユグノを助けた。バルサはユグノの歌声に酔いしれ、タンダを喜ばせようとユグノを連れて家に向かう。
このユグノの歌声が人心を惑わし災い引き金になる。

Ab385adb63884858baf252a452acfa7d夢の守り人
上橋菜穂子(Uehashi Nahoko
新潮文庫
2008年

町には、眠り病のうわさが流れていた。
タンダの姪カヤが数日前から目がさめない。カヤは秋にはとなり村の男に嫁ぐことになっていて、望まぬ結婚に世を儚んでいる。
新ヨゴ皇国の第一皇子の母親一ノ妃は、第一皇子を亡くし生きる希望を失っていた。一ノ妃も眠ったまま目覚めない。
第一皇子が亡くなって、今や皇太子となったチャグムはいずれ帝になる。帝になりたくないチャグムも眠りに陥った。
〈花〉に誘われる魂は、今の生活に絶望し逃れたいと思っている魂なのだ。

姪を眠りからさます〈魂呼(たましいよ)ばい〉の術をしなくてはならないが、ひとつ間違えばタンダ自身が命が危ない。
しかし、〈魂呼ばい〉を試みて失敗したタンダは、あの世〈ナユグ〉で〈花番〉にさせられ、この世〈サグ〉で、人鬼と化してユグノを殺そうと襲いかかりバルサたちと闘った。
バルサやトロガイと、星読み師シュガや『精霊の守り他人』でバルサと闘った狩人たちが協力して、眠り病にかかったカヤ、一ノ妃、チャグムたちの魂を取り戻す闘いを繰り広げるのだった。→人気ブログランキング

精霊の守り人
闇の守り人
夢の守り人
虚空の旅人
神の守り人来訪編
神の守り人帰還編
蒼路の旅人
天地の守り人 第1部 ロタ王国編
天地の守り人 第2部 カンバル王国編
天地の守り人 第3部 新ヨゴ皇国編
獣の奏者1 闘蛇編
獣の奏者2 王獣編
獣の奏者3 探求編
獣の奏者 外伝 刹那
流れ行く者 守り人短編集
バルサの食卓
孤笛のかなた
鹿の王
水底の橋 鹿の王 

2015年7月13日 (月)

闇の守り人 上橋菜穂子

精霊の守り人』に続く「守り人シリーズ」の第2作目。
養い親ジグロはなぜ己の人生を捨ててまで、バルサを育てたのか?それを知るために、女用心棒バルサは25年ぶりに故郷のカンバル王国へ帰ることにした。
バルサが自らの過去と向き合う物語である。
Bf1ff85f93464ce9ba61ce458d44ae3a闇の守り人
上橋菜穂子(Uehashi Nahoko
新潮文庫
2007年

カンバル王国は新ヨゴ皇国の北に位置する国土のほとんどが山岳地帯の貧しい国である。バルサは25年前にジグロに手を引かれてくぐった洞窟を、再び通ってカンバル王国に入ることにした。
洞窟の中で、バルサは〈闇の守り人〉ヒュウルに襲われている少女に助けた。一緒にいた兄のカッサにはバルサとヒュウルの短槍の闘いが、まるで舞のように見えた。

王の主治医だったバルサの父親は、王の毒殺を弟のログサムに命じられ、実行せざるを得ない窮地に追い込まれた。失敗しても成功しても、自分もバルサの命もないことを父親は知っていた。
父親は友人のジグロに幼いバルサを託し、ジグロはバルサを連れて洞窟をくぐり抜け新ヨゴ皇国に逃げた。ジグロは、〈王の槍〉というカンバル最強の武人集団のひとりとして尊敬されていた。
そして父親は惨殺された。
王となったログサムは、ジグロを金の輪を盗んで逃げた犯罪者に仕立てあげ、ジグロを殺害することを氏族長たちに命じた。金の輪は9氏族と王家の絆を象徴する宝物であった。

バルサは施療院を営む叔母のユーカに会いにいく。
ユーカから、ジグロが重罪人とされていて、金の輪を取り戻しに向かった〈王の槍〉たちが次々とジグロ殺され、9人目のユグロが兄ジグロを倒し金の輪を取り戻したと偽って、英雄になっていた。バルサはあまりにも事実と異なる話に驚いた。
ユグロは嘘で塗り固められた過去が暴かれることを恐れ、バルサを殺害しようとする。

ユグロの王国の存続を危うくする陰謀を、長老は阻止しようと策を練っていた。長老のたっての願いで、はじめは固辞していたバルサはカッサの用心棒を引き受けるのだった。→人気ブログランキング

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神の守り人来訪編
神の守り人帰還編
蒼路の旅人
天地の守り人 第1部 ロタ王国編
天地の守り人 第2部 カンバル王国編
天地の守り人 第3部 新ヨゴ皇国編
獣の奏者1 闘蛇編
獣の奏者2 王獣編
獣の奏者3 探求編
獣の奏者 外伝 刹那
流れ行く者 守り人短編集
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鹿の王
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2015年7月11日 (土)

画鬼 暁斎展@三菱一号館美術館

暁斎展を三菱一号館で開催する理由があった。
それは暁斎の弟子ジョアサン・コンドル(1852年~1920年)が、三菱一号館を設計したからである。
ジョサイア・コンドルはイギリスの建築家、鹿鳴館や三菱一号館や岩崎久弥茅町本邸洋館など明治時代に数々の洋館の設計を手掛け、工部大学校(現東京大学工学部)の教授を務めた。
暁斎とコンドルは、師弟というより深い友情で結ばれた友人の関係であった。
暁斎がコンドルのために書いた遊女の錦絵や絵日記などから、ふたりの濃厚な関係がうかがわれる。

河鍋暁斎(1831年~1889年)は、幕末から明治の時代、文明開化の時代に活躍した。
暁斎は7歳で、歌川国芳に師事し浮世絵を学んだ。9歳の時に神田川で拾った生首を持ち帰り写生したという。
その後、狩野派に入門し、実際に経験した火事を写生したり、獲った鯉を詳細に描いたりした。狩野派の修業は11~12年かかる修行を9年で終えたという。

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6月◯日(日)
狩野派の修業時代に描いた「毘沙門天之図」が展示されている。軸から飛びててくるような勢いを感じる作品だった。
そのほか鯉、カラス、妖怪の猫、鳥獣戯画が印象に残った。
浮世絵、錦絵、水墨画、風刺画、春画、絵日記、小説の挿絵など、幅広い作品が展示されていた。
暁斎は少なからず葛飾北斎の影響を受けている。自ら「画鬼」と名乗っているところは明らかに北斎を意識している。

150627

列ができている所はモザイクガラスに隠されている春画コーナー。18歳以下の入場者は保護者がいないと、入れないエリアである。
列に並んで進みながら前の女性と同じように、葉書大の春画に顔を近ずけて観賞するのは、なんとも奇妙な気分だった。

ジョサイア・コンドルの作品も展示されている。
明治14年、政府のお雇い外国人の建築家コンドルは暁斎に入門した。暁斎はコンドルに「暁英」の雅号を与えている。
コンドルは落語、茶道などにも興味を持ち、1893年に花柳流の舞踏家、前波くめと結婚している。→人気ブログランキングへ

河鍋暁斎記念美術館は埼玉県蕨市にある。

暁斎展
2015年6月27日~9月6日

 

 

2015年7月 8日 (水)

キラキラネームの大研究 伊東ひとみ

本書は、現代の軽佻浮薄な風潮のひとつと捉えることのできるキラキラネームを、日本語の歴史から解き明かそうとしている。
キラキラネームから見えるのは、「漢字」が過去の歴史とのつながりを断ち切られ、イメージやフィーリングだけで捉える「感字」になりかけていることであるという。
「漢字」を「感字」にしてはならないというのが著者の主張。
Image_20201125173801キラキラネームの大研究
伊東ひとみ (Itoh Hitomi
新潮新書  2015年

キラキラネームは、1990年代中頃、団塊ジュニア世代の子どもたちから始まった。
団塊ジュニア世代以降(当用漢字第三世代)は、カジュアルに漢字を捉えていて、漢字の捉え方にそれ以前の世代と違いがあるという。
キラキラネームの共通項は、奔放な漢字の選択と日本語離れした音の響きゆえに他人が読めないところにある。
人に読まれたら負けという「俺様化」が「真性キラキラネーム」で、読みにくいけれどなんとかギリギリセーフ、名付けた親にはキラキラネームのつもりはないというのが「偽性キラキラネーム」である。ほとんどの親はギリギリセーフの感覚でつけているという。

キラキラネームの根底には、「国語国字問題」による世代間の断層があるという。
戦前戦中派は「国語国字問題」とともに歩んできた「当用漢字第一世代」であり、その子どもたち、特にベビーブーマーは当用漢字によって制限された漢字表記で育った「第二世代」であるとする。団塊ジュニア世代以降の「第三世代」になると、祖父母父母世代の頃まであった漢和辞典的な規範の引力が弱まったという。

1947年(昭和22年)に交付された戸籍法により「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない」と定められた。これによって子供の名前には当用漢字表にある1850字しか用いられなくなった。その後、1981年に当用漢字に95字が加えられて、常用漢字(2136字)となった。
現在、名前に使える漢字は、常用漢字と名前用漢字299字(1952年に52字が定められ、その後削除されたり追加されたりしている)と決まっている。ただし読み方は定められていない。この曖昧さがキラキラネームが生まれる素地なのである。

「国語国字問題」は、文字をもたなかった日本語に、「漢字」を取り入れたことから始まった「漢字」と「やまとことば」の融合とせめぎ合いにより醸成されてきたハイブリッド言語ゆえの運命であるという。→人気ブログランキング

2015年7月 3日 (金)

精霊の守り人 上橋菜穂子

緻密で壮大なスケールの異世界ファンタジー「守り人シリーズ」の第1作目。
単槍使いの女用心棒バルサは、濁流に飲み込まれた新ヨゴ皇国の皇子チャグムを助けたことで、チャグムの用心棒として雇われる。
11歳のチャグムは体に〈ユグナ〉の精霊に卵を産みつけられたことで、帝の本当の子ではないとされ、命を狙われることとなった。こうして、バルサとチャグムは刺客と闘いながら旅を続けことになった。
Image_20201128160101精霊の守り人
上橋菜穂子(Uehashi Nahoko)
新潮文庫 2007年

なぜチャグムの体に卵が宿ったのか?
それは、二百数十年前、建国の祖であるトルガル帝が水の妖怪を退治した伝説が記された古書に解決の糸口があった。
100年に一度、水妖は人間に卵をうみつける。卵食いのラルンガに卵を奪われてしまえば、大旱魃に見舞われるのだ。
事の真相を知った帝は、生きたままチャグムを連れてくるよう命じた。

大旱魃を回避するには、チャグムが卵を産みラルンガの手の届かないところに卵を運んでしまうことだ。
バルサは、幼馴染みの薬草師タンダ、当代一の呪術師トロガイ婆さんなどの助けを借りて、チャグムと卵を守ろうとする。

本作は、目に見える世〈サグ〉と別の世〈ナユグ〉、ヨゴ人と先住民のヤグー、地上の民と水の民、卵と卵食いというふうに、二元対比の形で構成されている。ふたつが交差することで闘いや融和が起こりストーリーが展開される。→人気ブログランキング

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