英国の夢 ラファエル前派展@新潟市美術館
リバプール国立美術館所蔵のラファエル前派およびその周辺の画家たちの作品70点が展示されている。
新潟市美術館開館30周年を記念した企画。
ラファエル前派(Pre-Raphaelite Brotherhood)とは、イタリア・ルネッサンスのラファエル以降の規範に縛られた美術からの解放を目指し、それ以前の素朴で真摯な画風を追求した集団のこと。19世紀後半のイギリスにおける芸術運動である。
1848年、イギリス王立美術学校の生徒だったダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの若者3人によってラファエル前派は結成された。
ギリシャ神話や聖書、中世の伝説や文学から題材を得て、自然の細部を忠実に描写することに重きをおいた。
ラファエル前派の理論的支柱になったのが、『近代画家論』を書いた当時のイギリスを代表する美術評論家のジョン・ラスキン(1812〜1901年)。ラスキンは、批判されたラファエル前派を擁護した。
ラファエル前派が活躍した時代は、ちょうどビクトリア時代(1837〜1901年)に重なる。この時代は、イギリスの産業革命による経済の発展が成熟したときであり、イギリス帝国の絶頂期であった。
一方、19世紀後半といえば、フランスでは印象派が活躍した。
ラファエル前派と印象派は、「それまでのアカデミーの権威主義に反発した」という点で類似しているが、目指すところは著しく異なった。
所詮、ラファエル前派は絵画史における「あだ花」、「復古」という名の小休止である。創始者のひとりミレイは、1853年にアカデミーの準会員なったことで数年後にグループは解散してしまった。また、ロセッティとハントは仲間うちの女ジルダを争奪しあい仲違いした。
一方、ミレイはラスキンの妻エフィと恋仲になってしまい、エフィは歳の差があったラスキンと離婚しミレイと再婚した。
まったくもってTVの昼のメロドラマに劣らずドロドロしている。
去年(2014年2月2日~4月6日 )、森美術館で開かれた「ラファエル前派展」では、このあたりの事情に触れていたが、本美術展ではほとんど触れられていない。
グループとしての活動は短いが、絵画運動は続いた。
本美術展で印象に残ったのは、エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズの巨大な水彩画『レバノンの花嫁』(358×712cm、1891年)、水彩でこのサイズ、迫力がある。→人気ブログランキングへ
→【2014.04.02】ラファエル前派展
英国の夢 ラファエル前派展(2015年7月19日〜9月23日)
新潟市美術館
新潟市中央区西大畑5191-9
« 『untitled』ロッカクアヤコ@軽井沢現代美術館 | トップページ | クレオパトラとエジプトの王妃展@東京国立博物館 »
「美術展」カテゴリの記事
- 楽園のカンヴァス 原田マハ(2020.03.16)
- カラヴァッジョ展@国立西洋美術館(2016.06.01)
- 生誕300年記念 若冲展@東京都美術館(2016.05.23)
- 美術館の舞台裏 高橋明也(2016.04.07)
- ガレの庭展@東京都庭園美術館(2016.04.01)
« 『untitled』ロッカクアヤコ@軽井沢現代美術館 | トップページ | クレオパトラとエジプトの王妃展@東京国立博物館 »
コメント