流(りゅう) 東山彰良
第153回直木賞(2015年7月)受賞作。
祖父を殺した犯人を探し続ける主人公の波乱に満ちた無軌道な青春を描く。
殺人事件の背景には、日中戦争下における国民党と共産党の壮絶な抗争があった。
流(りゅう) 東山 彰良(Higashiyama Akira) 講談社 2015年 |
1975年、台湾、蒋介石が亡くなった次の月、16歳の葉秋生(イエ・チョウシェン)は祖父が仕事場の浴槽に沈められて殺されているのを発見した。
犯人は怨恨絡みが考えられ、広東人だろうと思われた。
台北一の進学校に通っていた秋生は、替え玉受験を引き受けばれてしまう。
台湾で一番レベルの低い高校に転校させられた。
そこで不良たちとやりあう無軌道な日々を送る。香港映画を思わせる格闘シーンがある。受験が近づくと、少しは勉強するかと思いきや、しない。
案の定、志望校に合格せず、仕方なく陸軍学校に入ったものの、シゴキが耐えられず、中退する。
行くところがなくなった秋生は2年の兵役に。
兵役を終えると、親戚の会社に勤め無軌道な生活から軌道修正した。
そして、前から秋生が想いを寄せていた幼馴染の毛毛(マオマオ)と恋仲になるが、思い通りにはいかない。
やがて、祖父を殺した人物の目星がつくと、秋生は危険を顧みず中国に渡ることを決意するのだった。
冒頭、1984年3月、秋生は山東省の青島国際空港に降り立ち、祖先が暮らしていた土地に向かった。村の外れに立つ石碑には、1943年に、祖父がこの地で行ったことが刻まれていた。風雪に晒されて一部の文字が判読できなくなった石碑は、まるで祖父の人生を象徴しているかのようである。→人気ブログランキング
→『火花』又吉直樹 第153回芥川賞受賞作
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