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『完全教祖マニュアル』架神恭介 辰巳一世

新興宗教の教祖になるという現実離れした視点から宗教にアプローチすると、宗教がかかえる危うさや非社会性が見えてくる。
傍から見れば、宗教ほど利己的で胡散臭いものはないだろう。その点は、新興宗教であろうと3大宗教であろうと違わない。
本書は、経営者を目指す人の、毛色の変わった啓発本とも捉えられる。

完全教祖マニュアル (ちくま新書)
完全教祖マニュアル
posted with amazlet at 15.09.01
架神 恭介 辰巳 一世
ちくま新書
2009年11月

著者が、なにを置いても伝えたいことが、表紙に抜粋されている。
それは以下。
〈皆さんの中に、宗教に関して次のような持論をお持ちの方はいませんか。すなわち、「宗教は社会の安寧秩序を保ち、人々の道徳心を向上させるものであり、社会を乱すものであってはならない」と。残念ながら、これはとんだ見当はずれなので直ちに忘れてください。宗教の本質というのは、むしろ反社会性にこそあるのです。〉この後本文では次のように書かれている。〈特に新興宗教においては、どれだけ社会を混乱させるかが肝だということを胸に刻んでおいてください。 〉

ユダヤ教徒であったイエスは、娼婦や徴税人の話を聞いたり、安息日に医術を施したりしていた。イエスの行動は、今日、社会的に何も問題のないことであるが、当時のユダヤ教社会では反社会的だった。こうしたことは、イスラム教にも仏教にもみられる。

本書の語り口は、ジョークを交え軽くかつ大胆であるが、その実、鋭く深い。
教祖になるために成すべきことは、次のふたつ。
人(信者)をハッピーにする。ほか(社会、他の宗教)との差別化をはかる。
宗教の本質は反社会的なものという著者の指摘は的を射ている。→人気ブログランキングへ

完全教祖マニュアル架神恭介×辰巳一世 ちくま新書 2009年
マグダラのマリア エロスとアガペーの聖女岡田温司 中公新書 2005年
不思議なキリスト教橋爪大三郎×大澤真幸 講談社新書 2011年
新約聖書 ~イエスと二人のマリア~DVD ジャコモ・カンピオッティ 2012年
ファンシイダンスDVD 周防正行 1989年 
星の旅人たちDVD エミリオ・エステヴェス 2010年
アレクサンドリアDVD アレハンドロ・アメナーバル 2009年
セブンDVD デヴィッド・フィンチャー 1995年

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『完全教祖マニュアル』のレムナント
ベツレヘムの大工の息子が30過ぎで、たったの3年間の活動で、世界一有名な教祖としてサクセスした。
日本人が無宗教がふつうなわけは?
明治政府の政策:信仰の自由は認めるけれど、特定の宗教を信仰せずに、天皇だけ崇拝するがふつう。という感覚ができあがり、敗戦で天皇崇拝が抜け落ち、いまに続いている。
宗教の成立条件は「なにか言う人」「それを信じる人」のふたつだけ。
教祖の仕事は、人をハッピーにすること。
【思想編】
教義は既存の宗教が現代感覚と合わなところを修正しよう。
既存宗教の焼き直しパターンが楽。
反社会的な教えを作ろう。
新興宗教はその社会が抱える問題点に根ざして発生するから、宗教の役割は、社会通念に逆らってでも正しいと信じることを貫くこと。
社会は常に正しいわけではない。
社会が提示する基準では負け組となる人を、別の基準を作って、勝ち組にする。ハッピーにすることである。
前提と問題点を関係づけて、哲学の要素を持ち込む。そういう難しい作業は、インテリにやってもらおう。
大衆に迎合する。
教えを簡略化する。
葬式はしたほうがいい。
現世利益。プラシーボ効果。手をかざすと肩こりが治った。
イエスは貧乏人に医術らしきことを施した。治らなくとも心のケアにはなっただろう。
来世利益。浄土宗、死んだら極楽に行けるから安心だ。安心してハッピーになれるのは現世の人なのだから、来世利益といっても現世利益。
偶像を作ろう。偶像はなんでもいい。
獲得した教者を逃がさないための教義作り。
宗教には不思議なことに対処する方法論がある。不思議なことが不思議でなくなれば怖くない。
不安を煽ろう。
現代ではエコという概念が不安を煽っている。
救済を与える。キリスト教、神を信じればOK。仏教、悟りを開けば大丈夫。
信者が信仰を失えば、神に見捨てられたことになる。キリスト教の予定説。
食物規制、教団の外と内を差別化する。食物規制は異教徒との交わりを規制することにつながる。
断食することで差別化される。普通でないこと、聖なる行為になる。
暦を作る。記念日をつくる。聖なる日。
異常な振る舞いも差別化のひとつ。
無条件で救われるのは不安である。なにか義務を与える。
権威を振りかざす。人は権威に従うことで社会性を身につけていく。権威を振りかざせば、信者はその宗教の社会性が身についていく。
【実践編】
弱っている人を見つける。老人や病人。に布教をする。
金持ちも狙う。
自分の親族を勧誘する。親族を信者にしないと、布教のさいに、なに馬鹿なことやってんのなどと邪魔をするので身も蓋もない。
人々の家を回ろう。今は困っていなくともあとで、有用になるかもしれない。
尿漏れ薬はいまは要らない。将来ふと思い出してその薬を求めるようになる。
コミュニティを作ろう。キリスト教の日曜礼拝。イスラム教のモスクでの金曜礼拝はコーランに書いてある。
イベントを定期的に行う。
浮世と違う宗教建築を立てる。伊勢神宮とデズニーランド。
ここからはいささか物騒な話になる。
他教をこきおろそう。 他教を認めよう。と言っても自分の宗教を上においているから、結局こき下ろしと同じ。
異端を追放しよう。異端追放はキリスト教の得意とするところ。
異端追放は当事者にとっては重大事だが、傍から見ればどうでもいいこと。
迫害に対処しよう。
迫害は信仰の強化につながることもある。
日蓮正宗は他宗教を迫害する。
出版しよう。
不要品を売る。数珠、ロザリオ、タスビー(スバハ)数を数えるもの。傍から見ればガラクタ。
数珠を買わないと葬式で失礼、買わないと人としてなっていない。買わざるをえない。
戒名もすぐれた商品。
免罪符をつくる。
キリスト教、なんとなく抱いている不安を罪としたところが慧眼である。それで免罪符を買わせる。
喜捨を受け付ける。正しい信仰心があれば経済的にも恵まれるのが、ユダヤ教。
教祖は寄付をしろ。
寄付をすることで、広い心の持ち主といわれるだろう。寄付されたものは感謝するし、信徒は教主を尊敬する。大学に寄付すれば名誉博士にもなれるかもしれない。

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