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『泣くな道真 ―太宰府の詩―』澤田瞳子

藤原時平の策略によって、京でナンバー2の右大臣菅原道真は太宰府権師(ごんのそち、長官)に就任させられた。左遷である。
憔悴しきった道真を、周りがあれやこれやと盛り立て自信を回復させ、ついには道真は京への仕返しとなる策略に奮闘するのだった。
小野小町を恬子(しずこ)として登場させている。
歴史学を専門とする著者ならではの資料を重視した傑作であるが、潔いことに文庫書き下ろしである。

泣くな道真 大宰府の詩 (集英社文庫)
澤田 瞳子
集英社文庫 2014年 ✳︎9

太宰少典(しょうさかん)龍野穂積が、道真を世話する役を命じられる。穂積は昼近くになると居眠りをするうだつの上がらない男、「うたた寝殿」と陰口されている。
もうひとり、道真に深く関わるのは小野恬子。露骨な権力闘争に嫌気がさした括子は、京から赴任した叔父の太宰府大弐(だいに)小野葛絃(おののくずお)と兄の小野葛根(くずね)を頼って太宰府にやってきた。
才色兼備で自由奔放な恬子は頗る評判が悪い。何人もの官人との間に色恋絡みの騒動を起こしている。ところが悪評など気にする恬子ではなかった。
そんなふたりが道真の無聊を慰めることとなった。

道真は穂積がもっていた欠けた唐墨に目を輝かせた。
その唐墨は、博多津の悪徳唐物商のババア・幡多児(はたご)から穂積がもらったもの、一種の賄賂だった。欠けているとはいえ、その唐墨は青墨という高価なものだった。
唐の逸品に興味をもった道真は博多津の唐物屋に出向くことにする。
唐物屋に並ぶ品物は玉石混交。値打ちを次々に言い当てる道真に、幡多児は驚き、目利きとして雇いたいと提案する。そして道真は身分を偽って唐物屋で働くことになった。

一方、大宰府では経理不正事件が発覚する。
大帳司の算師・豊原清友が正税帳を改竄して、大金を使い込んだのである。
道真は安い唐物を買い、京に支店をもつ唐物屋に高く売りつけ、帳簿の穴を埋めようと思いついた。
京から派遣された豊原清友の不正に、京の貴族たちがまがい物に大金を叩いて穴埋めする。道真とってこれほど痛快なことはないだろう。
道真の唐文化に対する造詣の深さが、京に対する仕返しにつながったのだ。
ところで、恬子は唐突に太宰府から姿を消し陸奥に向った。

月人壮士(つきひとおとこ)/中央公論新社/2019年
落花/中央公論新社/2019年
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京都はんなり暮らし/徳間文庫/2015年
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満つる月の如し 仏師・定朝/徳間文庫/2014年
泣くな道真 ―太宰府の詩―/集英社文庫/2014年

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