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2015年11月

2015年11月25日 (水)

なぜ、習近平は激怒したのか 高口康太

中国政権を痛烈に批判する風刺漫画を描いたことで、辣椒(ラージャオ 「唐辛子」という意味)は、運営するネットショップを閉鎖せざるを得なくなり生活の糧を奪われた。
さらに、身の危険を感じるようになり、2014年日本に亡命する形となった。
辣椒の中国版ツイッターのカウントは100回以上削除され、もはや中国で風刺漫画をネットに流すことに力尽きたという。

Image_20201127090901なぜ、習近平は激怒したのか 人気漫画家が亡命した理由
高口康太 (Takaguchi Kota
祥伝社新書 2015年
左は、オバマ大統領と安倍首相のベッドに入ろうとしている朴槿惠大統領を、習近平が札束をチラつかせて自分のベッド誘っていて、ベッドの外には足蹴にされた金正恩がミサイルのオモチャを手にして転がっているという、まさに東アジアの政治状況を捕らえたもの。ドアの陰から部屋の様子を伺う馬英九総統を加えれば、旬の状況になる。

右は2012年の台湾総督選挙を、ネット検閲システム「グレート・ファイヤー・ウォール」越しに羨ましそうに見つめる中国人を描いている。

151125_2

近年の中国情勢を振り返ると、2011年から12年にかけてネット抗議運動や環境デモが集中し、民主化が急速に進むかに見えた。
2012年11月に、習近平に政権交代となると、父親が改革派の習仲勲であり、習近平自身が文化大革命時代に7年間にわたり下放されたこともあって、国民は習近平が民主化に踏み切ると期待した。ところが、習近平は期待を裏切る方向に舵取りを始めたのだった。

まず、汚職の徹底した追求が行われ、習近平体制になってから18万人超の幹部・党員に処分が下されたという。この政策は大いに国民に支持された。

グレート・ファイヤー・ウォールが強化され、政府に不利な発言をしたブロガーは事情徴収されたり収監されたりし、思想統制、言論統制が行われた。いまや、1000万人がネットの監視に参加してるという。
御用ブロガーが要請され、共産党がプロデュースさせたダンスがネットに流れ、勧善懲悪のドラマが流行し、習近平が主人公のアニメが作成され、人民解放軍のアイドルグループがデビューし、ネットという「陣地」を、改革を夢見ていた国民から共産党が奪ってしまった。

教育現場では、大学の講義で話してはならない7項目が通達された。
その内容は、〈普遍的価値を語るべからず。報道の自由を語るべからず。市民社会について語るべからず。市民の権利について語るべからず。中国共産党の歴史的過ちを語るべからず。権力者・資産階級について語るべからず。司法の独立について語るべからず。〉
これでは、文科系の学部では教えることがなくなったも同然である。

著者は、中国人の多くが現状に満足し楽観しているという。明日、すべてが奪われてもおかしくない社会に生きながら、今の小さな幸福に満足し、本当のリスクを見ようとしていないという。もはや民主化の芽は完全に摘み取られてしまった。
さらに、習近平には政敵を蹴落とし、10年と決められている書記長の任期をどうにかして延長し、毛沢東と同等の、いわば「皇帝」の座に就く野望を抱いていると分析している。→人気ブログランキング

2015年11月19日 (木)

美貌格差 ダニエル・S.ハマーメッシュ

美貌は人にどの程度の利益をもたらすのか。経済学者が検討した。
まずは、主観が入り込む美貌を統計処理できるかどうかを論じなければならない。様々な点から検討した結果、美醜を5点から1点の5段階に採点する方法は、統計学的に正当性があるという結論に達する。この点をクリアしなければ、本書は成り立たない。
Photo_20210127143101美貌格差: 生まれつき不平等の経済学
ダニエル・S. ハマーメッシュ 望月 衛 訳
東洋経済新報社
2015年

各点数が占める割合は、「容姿の評価、アメリカにおける生活と雇用の調査(1970年代における18歳から64歳のアメリカ人、女性1495人、男性1279人のデータ)」によると、次のようになる。

素晴らしくハンサムか美人(5点)
容姿がよい(4点)
平均的な容姿(3点)
見るべきものなし(2点)
醜悪(1点)
女性 3% 
女性 31%
女性 51% 
女性 13% 
女性 2%
男性 2% 
男性 27% 
男性 59% 
男性 11% 
男性 1%

収入に関する結果は、男女の平均でみると、美貌のグループ(4点・5点)は平均(3点)より収入が5%高く、見た目の悪いグループ(1点・2点)は平均より10%低かった。
生涯の所得では、美しい人と醜い人では、23万ドルの差がつくという露骨な結果がでた。

弁護士も大学教授も美貌は有利である。政治家の人気は明らかに美醜が関係する。
売春婦も美しい人が稼ぐ。COEがいけてる会社の成績はいい。
融資を受けるさいも美貌は得である。
現代社会には、美人プレミアムと醜人ペナルティがはびこっているのだ。

事故により顔面をケガした人の補償問題にかかわっている著者は、美貌だけに目を向けてはいない。ブサイクな1~2%の人たちの不遇は、有色人種たちが受けている差別と変わらないとし、政治的に保護されうるとしている。→人気ブログランキング

2015年11月17日 (火)

日本を席巻するキラキラネーム

いつの頃からか、子どもたちの名前に違和感を覚えることが多くなった。
それは、アニメの登場人物の名前や、外国人の名前や、読めない名前や、読み方を知らされて愕然とする名前など、漢字が当て字に使われるようなキラキラネームが増えたからである。キラキラネームの同類にDQN(ドキュン)ネームがある。これはネットで使われている「それ、アウトでしょう」という意味の俗語DQNからきている。
DQNネームは、その名前で生きていくのは、さぞや辛いだろうと思わせる名前のことで、名づけた親への批判が込められている。DQNネームは、キラキラネームのなかに含まれて語られることが多い。

親が自らの子どもに名前をつけるときに、ありふれた名前ではなく、と言ってそれほど突飛ではなく、可愛らしい響きを持つ名前とか、将来に期待が込められている名前とか、あれこれと頭を悩ませるのは古より行われきたことである。占い本にあたり、漢字の画数を数えたり、 占いに凝っている親族や知人に相談したりもするだろう。私にも経験がある。

キラキラネームが流行りだしたのは、1990年代の中頃といわれている。ベネッセコーポレーション発刊の『たまごクラブ』が、新しいセンスで名前をつけよう提案し、個性的な名前を紹介してからだという。
いまや、子どもの名付け本や命名サイトには、キラキラネームがふんだんに載っている。

キラキラネームをつけた親たちの1割が、後悔しているというから、マタニティ・ハイの状況にある両親が、つい魔が差してキラキラネームに手を出すのかもしれない。
某大学教授が、高い偏差値の学部にはキラキラネームの学生はほとんどいないとコラムに書いたり、某大手株式会社の人事担当者が、キラキラネームは採用に悪影響を及ぼすと発言したり、キラキラネームは批判され世間から冷たい目で見られてきた。
そんな逆風をもろともせず、キラキラネームは増加し続けている。

親たちはこれくらいのキラキラ度ならセーフだろうとの判断で、「世界で一つだけの花」に特別な名前をつけようとする。それがくり返されて、キラキラ度の閾値は少しずつ下がってきた。
今のところ、日本人全体では、キラキラネームはごく少数であるが、子どもたちの間ではすでにマジョリティになっているという。→人気ブログランキングへ

はじめての不倫学 坂爪真吾 

不倫について、心理学的アプローチを極力排し、社会学的見地から分析するのが本書の目的。不倫は当人だけでなく家族や職場にも影響を及ぼし不利益をもたらす。だから予防が必要であるという。
Photo_20201113141601はじめての不倫学   「社会問題」として考える
坂爪真吾
光文社新書 
2015年

不倫の被害を減らすには、いつどこで感染しやすいかを知り、感染を減らすための予防ワクチンを開発し、感染した場合は重症化をどう防ぐか、また周りへの被害拡大をどうすれば抑えられるかを検討するという。

まずは当たり障りのないところで、配偶者との性生活が充実したものであればワクチンになりうる。そのために妻がエロティックになるエロ活をせよと説く。
次に、オープンマリッジ、スワッピング、高級会員制交際クラブについて、ワクチンになりうるかを検証しているが、オープンマリッジ、スワッピングはインモラルな要素が多分にあり、交際クラブは違法性を否定できない。

オープンマリッジの進化した形であるポリアモリーは、複数恋愛を容認し婚外性交を認めることである。ポリアモリーには、守らなければならない事項がいくつかあり、それを守る限り不倫ワクチンになりうるとしている。

著者の結論は次のとおりである。
法律で規定されている一夫一婦制を守るためには、信号の黄色に相当する婚外性行為、つまりグレーゾーンを社会的に認めることがワクチンになりうると主張する。青や赤だけでは事故が起こる。
<現行の夫婦関係を維持するための(=不倫ワクチンとしての)ポジティブ婚外セックスは、条件付き(期間限定・回数限定)で社会的に受容されるべき」となる。受容されるための条件とは、「個人間の関係ではなく、システム=文化制度の下で行うこと」「対象と回数を限定して行うこと」の2点である。>

婚外性交渉を社会に是認させようとする論調は、条件を設けたところで、大方には受け入れられないだろう。
あとがきで、本書も不倫ワクチンであると書く著者の自信のありように、脱帽する。→人気ブログランキング

人はなぜ不倫をするのか/亀山早苗/SB新書/2016年
はじめての不倫学「社会問題」として考える/坂爪真吾/光文社新書/2015年

2015年11月12日 (木)

服従 ミチェル・ウェルベック

分裂に向かう欧州連合を再結束させるには、いかなる方策があるのか。本書の答はイスラム教への服従である。
本書にはイスラム原理主義者にとって、バラ色の未来予想図が描かれているにもかかわらず、2015年1月7日にフランスで本書が出版されると、著者のミチェル・ウェルベックはイスラム過激派に命を狙われ、警察の保護下におかれたという。
それまで再三イスラム教を批判していながら、預言者を気取るのは許せないということなのだろう。
ウェルベックは1998年に『素粒子』を発表して以来、いくつもの問題作を手がけてきた。
83b7e2140f824dae8556a432f8eb5b24服従
ミシェル ウエルベック  大塚 桃 訳
河出書房新社
2015年

2022年のフランス大統領選挙で、移民排斥を訴える右派の候補がトップになり、イスラム同胞党のモアメド・ベン・アッベスは僅差で2位となった。決選投票で、ファシストかイスラムのどちらと組むかを迫られた左派と中道派は、イスラムの方がマシと判断した。
この結果、ベン・アッベスが圧倒的な勝利を収めフランスはイスラム化への道を進んでいくことになった。

主人公のフランソワは、ソルボンヌ=パリ第3大学の教授。19世末のフランスの代表的なデカダン作家ジョリス=カルル・ユイスマンスの研究者である。日常に流されて生きている独身の中年男。
大学は封鎖されフランソワは職を失うが、暮らすに困らない額の年金を手にすることになる。政権のバックには巨額のオイルマネーがあるのだ。

連合政府は好意的に評価された。
変わったことといえば、女性の肌の露出が極端に少なくなり、体の線が目立つ服は見られなくなったこと。テレビからはエロティックな要素が消えた。
また犯罪は激減した。
女性が労働市場から姿を消し、家族手当が大幅に引き上げられた。失業率は低下した。
そして義務教育は12歳までになった。
欧州連合に、トルコを加える交渉が始まり、モロッコも加える構想が出てきた。
ベン・アッベスの野望はオスマン帝国を築くことである。

フランソワは、大学の同僚だったスティーブに出会う。
スティーブは、大学管轄の広い宿舎に住み、給料はかつての3倍、すでに結婚し来月には2番目の妻を娶ることになっている。ランボーがイスラム教に改宗したという不確かな史実を教えているのだろう。

フランソワにも古典叢書編纂の仕事が舞い込んできた。ユイスマンスを担当することになった。
フランソワはユイスマンス研究の第一人者として丁重に応対されるようになるだろう。
そして、改宗すれば裕福な暮らしが待っている。複数の若い妻を娶ることもできるだろう。フランソワはそれも悪くはないと思うようになっていた。→人気ブログランキング

2015年11月11日 (水)

土曜を逃げろ チャールズ・ウイリアムズ

きのう(11月10日)の『新潟日報』夕刊の人気映画評『男と女の名作シネマ』に、フランソワー・トリュフォー監督の『日曜日が待ち遠しい』の解説が載っていた。
原作は、チャールズ・ウイリアムズの『土曜を逃げろ』である。コラムでは原作について触れていなかった。
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以前に、アマゾンマーケットプレイスから、『土曜を逃げろ』を1円で買った。
梱包はいたって簡素、明細を見るともちろん価格は1円で送料は250円、しめて251円である。
出品者はどうやって採算をとるのだろうと思った。実費の送料との差額が収入になるという。

Image_20201230155101土曜を逃げろ
チャールズ・ウィリアムズ/青木日出夫訳
文春文庫
1984年

被害者が猟銃で頭を撃ち抜かれ殺害された殺人事件の参考人として、主人公は保安官の尋問を受けた。家に帰ると旅行中のはずの妻が寝室で撲殺されていた。
2つの殺人事件の容疑者として逮捕されたら有罪にされてしまう。
日曜の朝までに、容疑を晴らす手をどうやって打つか、土曜が勝負だ。
頼りは機転が効く秘書。
大ヒットしたフランス映画『日曜日が待ち遠しい』(1983年 フランソワー・トリュフォー監督)の原作。
映画の原作になる本は、間違いなく面白い。(2011年2月)→人気ブログランキング

2015年11月10日 (火)

ピカソ展@宮城県美術館

雨がしとしと降っている11月の仙台市は寒かった。
開館は9時半、宮城県美術館に着いたのは9時7分。
開館前でも入れてくれるだろうという予測は甘かった。館内は明かりがついているものの人影は見えず、時間がくるまで扉は閉まったままだった。
入り口の脇にあるオープンカフェ用のデッキチェアーに縮こまって座って待った。
同じ考えの客がぱらぱらと現れて、「早すぎた」「まだか? 」「開けてくれてもいいのにね」などと、つぶやいていた。開館時には50名ほどが扉の前に並んだ。(2015年10月31日〜12月23日)

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ドイツのケルンにあるルートヴィッヒ美術館と国内からの計80点が展示されている。
パブロ・ピカソ(1881~1973年)の初期の作品、『貧しい食卓』『手を組んだアルルカン』は素晴らしかった。
キュビズムを取り入れたばかりの頃の作品は、意図するところが理解できて納得がいく。
しかし、時代を経るごとに意図を測りかねる作品が多くなっているように思う。
晩年の作品は精彩を欠き弛緩した印象を受けた。

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唾を履いても作品になると、世の中に喧嘩を売るようなことを言ったと伝えられるピカソは、天才なのだろう。
あまりに才能が豊かゆえに、小さくまとまらず、自由奔放に作品を手がけた結果、一貫性のない作品群になったのだろう。どんな作品もべらぼうな値段がつくのだから、意に添わぬ作品を手がけたかもしれない。
作品のあまりの多さも、まとまりのない印象を与える。ピカソの作品は油彩1万3千点、版画・素描・陶器など油彩以外が13万点あるといわれている。ちなみに、ピカソと同じように90歳をこえるまで活躍した葛飾北斎は、3万点の作品を残したと言われている。

ゲルニカを持ってくれば、間違いなく盛り上がる美術展になっただろう。
きっとキュレーター泣かせの画家なのだ。
ピカソを撮影したマン・レイの写真が40点も展示されていた。

常設展には、ピカソに影響を与えたと言われるワシリー・カンディンスキー(1866~1944年)の作品20余点が展示されていた。音楽を感じさせるわかりやすい抽象画だった。< /p>

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帰りのタクシー男性運転手によると、ピカソ展はサッパリ盛り上がっていないそうだ。
もう少しコマーシャルをうったほうがいいと言う。
話は変わって、運転手は羽生結弦の親戚だと言い出した。
葬式では羽生の父親の隣に座るというから、父親と兄弟かと思ったが、それ以上は関係を語らなかった。
運転手は甲高い声で早口で喋る。
母親はどうか知らないが、羽生一家は運動神経がすごくいいという。羽生は頭脳明晰で、成績はオール5だったそうだ。
話題は女子のフィギアスケートに移り、きのう(11月7日)の中国大会で2位になった本郷理華について語り始めた。
羽入と同じ宮城県出身の本郷は、父親が外人で幼い頃に別れ行方知れずになっているという。祖母が美容師で、かつて仙台市でフィギュアスケートを習っていた荒川静香と親しいという。また東北福祉大出身の鈴木明子にも可愛がられ、ここまで来たのだという。
東日本大震災のとき、中学生の本郷は一人で船に乗って、名古屋のコーチの元へ行き練習をしたという。さぞや不安だったろうが、根性は見上げたものだと褒めた。
演技で転んだシーンを見たことがないそうだ。それほどジャンプは安定しているという。
長い手足をヘリコプターのようにブルブル振り回しながらの演技がいいという。
羽生はもちろんだが、一番応援しているのは本郷だそうだ。
「インタビューの対応が子供すぎるのがねー」とオチがついたいったところで、タクシーは三越デパートの横に着いた。
地下の〈青葉亭〉で〈塩牛タン〉を買うことになっている。

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