下町ロケット 池井戸潤
ジェットコースターのように、めまぐるしく状況が変わる勧善懲悪もの。
第145回直木賞受賞作(2011年上半期)。
7年前の種子島宇宙センターでの実験衛星打ち上げシーンから始まる。
総責任者である佃航平の長年の研究の結晶である、大型水素エンジン・セイレーンを搭載した衛星の打ち上げは、あえなく失敗した。
下町ロケット 池井戸 潤 小学館文庫 2013年 |
失意の佃は研究者としての行き場を失い、父親が社長をしていた佃製作所を継いだ。
佃が引き継いでから、会社は製品開発で業績を伸ばし、父親が社長をしていたころの3倍の業績を上げるようになった。
しかし、筑波大学の客員教授の職に就いた妻・沙耶の不満は募り、別居することになる。そして離婚、娘は佃の元に残った。
そんなある日、商売敵の大手メーカー・ナカシマ工業から主力商品ステラが特許侵害で訴えられる。ナカシマ工業の目的は、裁判を長引かせ佃製作所の信用をを兵糧攻めにし、吸収合併しようというもの。
佃製作所の売り上げは下降線をたどり、メインバンクからの融資が断られ、万策つきたかに思われたときに、沙耶が知財関係では国内トップクラスの凄腕弁護士の神谷を紹介してくれた。
仲たがいして離婚したわけでなかったことが佃を救うことになる。
神谷弁護士は、ナカシマ工業の製品を特許侵害で訴えるという起死回生の策を打った。
ナカシマ工業の裁判を引き延ばす戦術をお見通しの裁判長は、和解を勧告し、双方の訴えをそれぞれ認めた。
佃製作所は難を逃れ、思いもよらない和解金を手にしたのである。
佃には別の難題がのしかかってくる。
大手の帝国工業が自社部品だけで製作を進めていた人工衛星のエンジンに不具合がみつかり、佃製作所の特許を50億で購入したいと伝えてきた。
特許を売るか、売らずに特許使用量を得るか。
ところが、佃の帝国工業への要求は、佃製作所にキーデバイスを作らせてくれというものだった。キーデバイスを作成するという佃の案に、社内では現実路線を顧みるようにと若手たちは猛反発し、社を二分する騒動となる。
佃は苦悩するが、夢を持ち続けることが将来の会社の飛躍につながると、自分の考えに固執するのだった。→人気ブログランキング