悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第1弾、著者のデビュー作である。
昨年、翻訳され爆発的にヒットした『その女アレックス』は、本シリーズの2作目。
パリ警視庁犯罪捜査部の警部カミーユの妻イレーヌは数週後に出産を控えている。
カミーユはふたりの女性の殺人現場に呼び出された。電気ノコギリやバーナーや酸が使われ、遺体は無惨に損壊されていた。頭蓋骨が釘で打ちつけられた壁には、《私は戻った》と血文字が書かれていた。指紋が残っていたが、ご丁寧にもスタンプによるものだった。
指紋のスタンプから1年前に起こった未解決の女性殺害事件と同一犯と推定された。
この事件では、奇妙なことに被害者の髪の毛が綺麗にシャンプーされていたのだ。
![]() 文春文庫 2015年 |
カミーユは、記者のあいだで手腕とその低すぎる身長で、ちょっとした有名人である。
事件解決のめどがつかない状況の中、カミーユの個人情報が大々的に新聞に載った。
ル・マタン紙の記者がカミーユの父親から聞きだきたものだった。
記事により、カミーユの立場は悪くなり、事件捜査から外されそうになる。
夜中に悪夢で目覚めたカミーユは、1年前に起きた事件の死体の状況が、小説の『ブラック・ダリア』と同じであるとひらめいた。
そして、今回の事件に合致する小説を洗い出すと、『アメリカン・サイコ』にたどり着いた。
犯人からカミーユ宛に、捜査の進捗状況を見透かしたような手紙が届く。
そして、過去の未解決の殺人事件と一致する小説を結びつける作業が始まった。
イギリスのグラスゴーで作業中の浚渫船が女性の遺体を引き上げた事件は、スウェーデン発のミステリの古典『ロゼアンナ』を摸したことが、判明した。
ミステリ好きには、たまらない展開となっていく。
ついには、犯人から次の殺人を示唆する手紙が届く。
仕上げの殺人は、果たしてどんな小説を模倣して行うのか?→人気ブログランキング
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