異類婚姻譚 本谷有希子
専業主婦の主人公は、ある日、夫婦の外見が似てきたことも、目の前にいる旦那のようなものも、受け入れられないと感じた。そんな思いに至る主婦は、世の中に多くいるだろう。マザコンの国・日本に棲息するぐうたら旦那に同化してしまう専業主婦の見込み違いを描いた作品。
第154回(2016年1月)芥川賞受賞作。
異類婚姻譚とは人間と人間以外が結婚する話のことで、例えば『雪女』や『鶴の恩返し』、『美女と野獣』や『奥様は魔女』など、世界中にあまたある。
異類婚姻譚 本谷有希子 (Motoya Yukiko) 講談社 2016年 |
サンちゃんは、子供なし持ち家あり、バツイチの旦那の稼ぎは人並み以上の専業主婦。ある日「自分の顔が旦那とそっくりになっていることに気がついた。」
家にいるときの旦那は、もっぱらハイボール片手にバラエティー番組を見ている。
サンちゃんは夫の顔が臨機応変に変化していることに気づく。
旦那は人といるときちんとしているが、二人だけになると気が緩むらしく、目や鼻の位置が適当になる。
ある朝、鏡を見ると、自分の顔が全体に間延びし旦那の顔に近づいていた。
二匹の蛇がお互いの尻尾を食べていく。同じだけ食べて頭にだけの蛇ボールになり、最後まで食べて何もなくなってしまう。夫婦はそんなものかなと、弟の同棲相手はいう。
なにを思ったのか旦那が毎日のように天ぷらを揚げ、ゲームに明け暮れるようになった。サンちゃんは旦那は無理して人の形をしていなくてもいいのじゃないかと思うようになった。
そして夫のようなものに大声で命令した。
サンちゃんと同じ思いにかられる主婦は、マザコンの国・日本にはごまんといるのではないだろうか。
他に収録されている、『〈犬たち〉』、『トモ子のバームクーヘン』、『藁の夫』の3篇も、テーマが異類婚姻譚に類似した物語。→人気ブログランキング
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