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2016年1月 9日 (土)

サザビーズ 石坂泰章

外からは決して知りえない、画商の仕事や絵画オークションの内側が書かれている。
帰国子女の著者は、大学卒業後、三菱商事に勤務し、その後画商として独立して成功したのち、サザビーズ日本の代表取締役に就任した。
著者は、画商時代、丸ビルと丸の内全体をウォホールの作品で飾るイベントを手がけ成功を収めた。さらにウォーホルのユニクロTシャツを販売にこぎつけ大成功を収めている。
Image_20201221095801サザビーズ  「豊かさ」を「幸せ」に変えるアートな仕事術
石坂泰章
講談社
2009年

画商の立場からすると、絵画を美術館に納めてしまうと、それでビジネスチャンスは失われてしまう。通常の売買なら、あと何度か訪れるはずのビジネスチャンスを補充する意味で、普通より高く買ってもらうことになるという。
画廊にしろオークション会社にしろ、絵画の売買で利益を得ることが目的であるから、控えめに語られているものの、突き詰めるとシビアな姿勢が貫かれている。

オークション会社が鑑定機関も兼ねていると思っている人が多いが、オークション会社に鑑定書は義務づけられていない。
買う場合、頼りになるのは作品のたどってきた来歴や展覧履歴のほかはない。最終的には自分の目である。
オークション会社が贋作を扱ったとなれば信用に関わる。贋作を排除しなければならない。
本物でない作品に出会った場合、何かが違うと直感が働くという。人物画の場合だと「よく手足を見ろ」と言われる。うまい贋作家でも顔は一生懸命描いても、ほかでふと手を抜くことがあるからだ。
作家の特徴がテンコ盛りになっている作品も危ない。シャガールで言えば、花、サーカス、故郷、花嫁、エッフル塔すべてが入った作品は、注意を要する。絵はいくらまねて描いても、その人間の心情が表れる。この作品の場合、贋作者の欲が現れたのだ。

オークションを仕切るオークショニアは資格が必要である。
オークショニアは、値段が決まりそうになっても、まだ値が上がると見るや言葉で煽って、やりとりを活発にするテクニックを持っている。
アートは価格があってないようなものなどと言われるが、そうではないという。もしそうなら資産として持てるはずがない。さまざまな要因で価格は変動するが、やがて落ち着くところに落ち着くのである。→人気ブログランキング
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