蒼路の旅人 上橋菜穂子
守り人シリーズの第1作『精霊の守り人』で、新ヨゴ皇国の11歳のチャグム皇太子は水妖の卵を宿したために、父の帝から命を狙われた。15歳のいまも、チャグムは帝に疎ましく思われている。
本書は守り人シリーズの外伝のような位置付けであり、女用心棒のバルサは登場しない。
綾瀬はるか主演で豪華キャストをそろえ、『精霊の守り人』がNHKでテレビ放映されている。
蒼路の旅人 上橋 菜穂子 新潮文庫 2010年 |
タルシュ帝の侵略を受けた海洋国サンガル王国の艦隊から、神の国新ヨゴ皇国に援軍の依頼がきた。この依頼がタルシュ帝国がしかけた罠だと見抜きながらも、帝はチャグムの母系の祖父トーサ海軍大提督を向かわせると朝議で決めた。
チャグムは「帝であるならば、私の父であるならば、妻の父の失脚をよろこぶような卑劣なことをなさるな」と帝に食ってかかり、帝は「そこまで言うならチャグムに任せよう、祖父殿を救ってくるがいい」と言い放った。
こうしてチャグムは行くも地獄止まるも地獄の苦境に立った。
チャグムとトーサ大提督は、たった3艘で援護に向かった。
案の定、チャグムたちは戦わずして捕虜の道を選ばざるをえなくなった。チャグム以下の海士をサンガルの船に捕虜として乗り込ませた後、ひとり残ったトーサは船に火を放ち自害した。
チャグムはタルシュ帝国のラウル王子に謁見することになった。
ラウル王子はチャグムに、新ヨゴ国がタルシュ帝国の枝国になることが、国を焼け野原としない唯一の方策であると迫った。帝を殺害しチャグムが帝にとってかわるというもの。
強大な軍事力を持つタルシュ帝国に新ヨゴ皇国は決してかなわない。チャグムは、新ヨゴ国の民を救うためにラウル王子の提案を飲まざるを得なかった。
新ヨゴ皇国に向かう船の中で、チャグムは思案した。
ロタ王国とカンバル王国と新ヨゴ皇国の北の3国で同盟を結ぶことこそが、タルシュ帝国に対抗しうる唯一の方法であるとの思いに至った。
その交渉をタルシュ帝国に気付かれずに成し遂げなければならない。
そして、読者が「え〜」と思われるかもしれないと著者自身が語るのは、最後の衝撃的なシーンである。それは、あとに続く『天と地の守り人』の3部作への布石である。→人気ブログランキング
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