"お金"から見る現代アート 小山登美夫
現代アートの悲観論を極力排除して、現代アートの前向きな部分を取り上げている。
現代アートは、抽象的だったり、あるいはメッセージ性が強すぎたり、こうあるべきだというような、美術のための美術になっていて、難解なだけであった。
![]() 山 登美夫 講談社+α文庫 2015年 |
奈良や村上の作品は、お勉強ではなく、自分たちのリアリティつまり自分たちの中から出てきたアート、生きているアート、リアルクローズなアートである。
アートの価格には2種類ある。
プライマリー・プライスとは、ギャラリストとアーティストの間で決定される。作品がアーティストの手から離れ初めてアートマーケットに出されたときにつく価格のこと。
セカンダリー・プライスとは、市場の動きによって上がったり下がったりする価格のこと。オークションにでた場合に落札価格やコレクターが作品を手離し転売するときの価格などさまざまである。
セカンダリープライスがどんなに高くなろうと、作家にはお金は入ってこない。
どんな作品にも共通している価格設定の原則。サイズが大きくなれば値段ば高くなる。恒久性の素材で描かれたものほど値段が高くなる。ドローイングよりもペインティングの方が高くなる。
現代アートを難しくしている元凶は、作品の評価と価格が結びつかないことだ。美術館に飾られている絵画も、もともとアートは値段がついていたものであるという意識で見るのがいい。
名画・作品といわれる人気作品は、技術・感情・コンセプトの3つの要素のうちどれかが際立っている。
たとえば、セザンヌの絵は技術とコンセプトで革新的。ムンクは感情表現が優れている。
ピカソのゲルニカはコンセプトと感情表現が優れている。
コレクターに対して、嫌いだけれどすごいは買いだという。
嫌いということは強烈な個性があるはずである。好きなものばかりを集めていると、同じような作品だけを集めることになるので要注意だという。
アジアン・コンテンポラリアート・オークションについて苦言を呈し、世界最高の美術品の見本市アート・バーゼルについて紹介し、日本の現代アートの現状を解説している。→人気ブログランキング
« 死んでいない者 滝口悠生 | トップページ | 霜の降りる前に ヘニング・マンケル »
「現代アート」カテゴリの記事
- 楽園のカンヴァス 原田マハ(2020.03.16)
- バンクシー 毛利嘉孝(2020.02.01)
- 現代美術コレクター 高橋龍太郎(2017.01.05)
- "お金"から見る現代アート 小山登美夫(2016.03.15)
- 現代アート入門の入門 山口裕美(2015.12.18)