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2016年4月 7日 (木)

美術館の舞台裏 高橋明也

民間美術館である三菱一号館の初代館長という美術展の裏側を知り尽くした立場から、美術展の内情を書いている。
まずは、美術館の経済的窮状を訴える。

かつて、美術展は西ヨーロッパや北米の美術館を中心に、有名絵画の貸借りで成り立っていた。学究的な性格を強く持ちながら地道に作られてきた展覧会は、近年はアジアや中東南米などの新興国が加わることで、商業化路線へ大きく舵をとらざるをえなくなったという。
その原因のひとつが日本にあった。バブル期に、来場者数を増やす展覧会作りをを目指した結果、海外の美術館は日本の海外展を資金獲得に利用する方向に走り出した。
Image_20201122120801美術館の舞台裏: 魅せる展覧会を作るには
高橋 明也
ちくま新書  2015年

美術館が美術展を開催するには、海外との強いパイプを持っていることが重要であった。かつて、日本でこうしたことが可能なのは新聞社をおいてほかになかった。今も、新聞社が主催に名を連ねる海外展が多いのはその名残りであるという。

展覧会の企画は通常5〜6年前から立ちあがる。
〈展覧会作りがスタートすると、海外の折衝においては、展覧会コーディネータや画商、収集家、研究者をはじめ共催する美術館がある場合には、美術関係者との打ち合わせに追われるようになる。国内においては、「チラシ・ポスター・カタログデザイン」「音声ガイド」制作スタッフとの打ち合わせ、「内装デザイン・施工」「運送・展示業務」関係業者とのやりとり、そのほか「保険」「監視業務」に関わる取引先との交渉もあれば、「ミュージアムショップでの商品展開」をどうするかというさまざまな業務が発生する。〉
こうした美術展10本のうち1本くらい、収支がプラスになることがあるという。

ジャーナリズムの長というべき新聞社が展覧会に直接関わるという日本の特殊な構図により、マスコミは紹介はできても批評せずの風潮がすっかりできあがっていることに苦言を呈している。海外では時には痛烈に批判し、時には賞賛する。こうした緊張関係こそ、展覧会に関わる関係者に必要なものだという。

バブル期以降は、ルノアールやモネ、ゴッホ、さらにはシャガール、ピカソなど、日本人に馴染みの深い作家の作品ばかりが、貸し出しを求められるようになり、欧米の美術館は困惑したという。

これからの美術展は、無名作家をキャスティングすることも必要である。
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