嵐のピクニック 本谷有希子
ブラックで可愛らしく奇想の展開の短編集。
大江健三郎賞(第7回、2013年)を受賞している。賞には賞金はなく、ご褒美は英語や独語への翻訳出版だそうだ。それにしても、著者の文体をまねた大江健三郎の解説文はどうしたんだろう、浮いている。
![]() 本谷 有希子 講談社文庫 2015年 |
『アウトサイド』
いくつかのピアノ教室へ通ったものの、バイエルすら終わっていない私に、新しいピアノ教師は優しく教えてくれた。その甲斐あってめきめき上達したが、ピアノ教師の狂気によって一変する。
『私は名前で呼んでいる』
会議中にカーテンの膨らみが気になり出しから始末が悪い、会議そっちのけで目がカーテンにいく。部下のプレゼンなど耳に入らない。
『パプリカ次郎』
市場で野菜を売っているパプリカ次郎の屋台を吹き飛ばし、銃声が響かせて何人かの人がいく。そのあと市場の人々が後片づけをすることの繰り返し。
『人間袋とじ』
足の指をしもやけを利用してくっつける話。
『哀しみのウェイトトレイニー』
オーガニックストアでレジ打ちをしている妻が、夫が見ていたテレビに映るボクサーの肉体を見て、一念発起、筋トレジムに通うようになり、 筋肉ムキムキになっていく。
『マゴッチギャオの夜、いつも通り』
サル山に入れられたチンパンジーがサルたちの洗礼を受ける。見守る若いサル・マゴッチギャオとの交流を描く。
『亡霊病』
入賞したコンクールの授賞式でスピーチの順番が回ってくると、亡霊病の発作が迫ってる。
『タイフーン』
バス停で母と僕と汚い服を着たおじさんは、嵐の中傘をさして交差点で信号待ちしている男の人を見ている。人々は次々に傘で空に舞い上がっていった。
『Q&A』
創刊からの連載Q&Aのコーナーが終わることになり、最後の13の質問に答える。
『彼女たち』
恋人と決闘することになり彼女に連れられて河原にやってくると、同じ事情の男女が続々現れた。
『How to burden the girl』
高い塀に囲まれた家に住んでいた女は5人の弟と親父さんを悪の手下に殺されたが。。
『ダウンズ&アップス』
売れっ子デザイナーは対等の口をきく若者が気に入って雇った。やがて、デザイナーは気持ちのいいお世辞を聞いていないことに気がついた。対等な話をする若者にイラつくようになった。
『いかにして私がピクニックシートを見るたびに、くすりとしてしまうようになったか』
試着室に入った客が店の服をすべて試着しても試着室から出てこない。翌日に持ち越し試着室ごと建物の外に出たのだが。。→人気ブログランキング
« 羊と鋼の森 宮下奈都 | トップページ | 星を継ぐもの ジェームズ・P・ホーガン »
「短篇」カテゴリの記事
- “少女神”第9号 フランチェスカ・リア・ブロック(2022.10.20)
- 脂肪の塊・テリエ館 モーパッサン(2022.09.24)
- 雨・赤毛 モーム短編集Ⅰ サマセット・モーム(2022.08.17)
- ショート・カッツ(2021.08.06)
- ミステリー作家の休日 小泉喜美子 (2021.05.16)
コメント