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『腐女子化する世界』杉浦由美子

腐女子とは、「ボーイス・ラブ(BL)」を愛好する女性オタクのこと。腐女子という言葉は、最近ではオタク女性全般をさす言葉へと広がっているという。
腐女子というインパクトの強い単語は、女性オタクたちが、「私たち腐っているしぃ」と自嘲的に言ったことから生まれたという。

腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち (中公新書ラクレ)
杉浦 由美子
中公新書ラクレ 2006年10月

「女性がオタクになりにくい」という通説に著者は反論する。ここで「萌え」がキーワードになる。女性には「萌え」る対象は、つまり興味や趣味の対象は広い。おたくになる素養は女性の方が強いくらいだという。精神科医の斉藤環も「おたくは男性より女性の方が多い」と指摘している。

名作と呼ばれる漫画『トーマの心臓』(萩尾望都)、『風と木の詩』(竹宮惠子)、『BANANA FISH』(吉田秋生)、『日出処の天子』(山岸凉子)などは男性同性愛を描いている。女性の妄想を刺激するものでしょうと、斎藤孝はいう。

腐女子には、既婚者も多いし恋人がいる人も多い。収入もそれなりにある。
腐女子たちは「現実の恋愛」とは別に「妄想の恋愛」を求める。その「妄想の恋愛」に自分は登場しない。妄想する余地を用意してある作品を好むのである。

だから「やおい」で十分なのだろう。
「やおい」とは、BL作品のうち、ほとんどが性描写のみで、物語を構成する「山場(や)」「落ち(お)」「意味(い)」の3つの重要な要素がないもののことである。アメリカでも、女性が男性の同性愛をパロディやファンタジーとして楽しむ文化があるという。
男性オタクは物語の中に自分を「介在」させるが、腐女子は自らを「介在」させない。男性の妄想と女性の妄想は基本的に違うのである。

BLを好むのは、読み手(腐女子)の多くが異性愛者であるため、男性が多く出てくる漫画や小説が楽しいからなのである。そこには女性性の否定などこれっぽっちもないという。つまり別腹なのだ。

女性のオタクたちの「腐っているしぃ」というのは、女性誌が煽ってきた「美しさ」や「恋愛体質」などの競争から外れることを意味した。男たちは女性を得ることがステイタスではなくなっている。女性の多様化が許されなかったがそれが許されるようになった。いわば腐女子でいられるのである。
著者は腐女子を、現代社会で女性がおかれた社会的な立場を解く鍵として捉えている。腐女子は格差社会を生き抜く知恵であると結ぶ。

→『少年の名はジルベール』竹宮惠子 2016/04/01
→『生き延びるためのラカン』斉藤環 2014/06/09
→『キッズ・オールライト』2013/06/15
→『一億総うつ病』片田珠美 2012/06/14
→『関係する女所有する男』斉藤環 2011/10/17

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