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『眩(くらら)』朝井まかて 

葛飾北斎の三女、浮世絵師のお栄を半生を描いた歴史小説。吉原の仲見世を描いた、お栄こと応為の作品『吉原格子先乃図』(表紙カバーの絵)は、レンブラントの作品と並び称されるほどの、光と影を巧みに操った傑作である。

お栄が絵師の吉之助に嫁いだのは22歳のとき。細かいことにこだわる吉之助は、家事をこなせないお栄を「女のくず」と罵り、お栄は吉之助の絵の才能をけなし、ふたりは別れた。
そして、出戻りの姉は息子の時太郎をおいて、あっけなく亡くなってしまう。後年この時太郎が北斎親子の厄介の種になる。

眩
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朝井 まかて
新潮社 2016年3月 ★★★★★
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お栄は兄弟子の渓齋英泉こと善次郎に密かに心を寄せている。善次郎はお栄の才能を買っていて、ふたりは何でも話せる仲だった。ところが、善次郎は女に食わせてもらって寝床で尽くすようなタイプの男である。
そんな善次郎がお栄を連れて吉原に登楼する。
そこには善次郎の3人の異母妹たちがいた。妹たちの合奏する琴と三味線と胡弓の調べにお栄はいたく感激した。
後に、この感激の場面を描いたのが『三曲合奏図』である。

お栄は、工房で北斎の右腕として働きながら、絵のことしか考えていない自由気ままな北斎の面倒もみる生活を送っていた。なにしろ北斎は引越しを93回して、号を30回変えた「ぶっ飛んだ」人物である。お栄にしても女だてらに昼間っから酒を飲み、食べ物はしょっちゅう煮売り屋から買ってくるような浮世離れしたところがある。

北斎は60歳の時に卒中で倒れ半身麻痺になったが驚異的な回復を見せ、その後『富岳三十六景』で大ヒットを飛ばした。

著者は、晩年の北斎に次のようなことを言わせる。
「巧いことと絵の奥義を極めることとは別物だ。どうだ巧いだろうってぇ絵には品がねぇし、わざと無心を装ったような絵も見られたもんじゃねえ。俺ぁな、描けば描くほど、絵がよく分からなくなる。ただそれが苦しいからといって目指すところを低うしたら、己の目論見よりさらにひどいことにならあ。・・・つまり描き続けるしかねぇんだ」

Oui

後半は、応為の代表作『三曲合奏図』、『吉原格子先乃図』の完成に至るまでの過程が描かれている。
死ぬまで絵を究めようとした北斎と同じ道を、還暦を過ぎたお栄が歩もうとするところで物語は終わる。

→『北斎と応為』キャサリン・ゴヴィエ 2015.6.19

阿蘭陀西鶴/講談社文庫/2016年
胘(くらら)/新潮社/2016年

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