アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・K・ディック
最終世界大戦の後、アンドロイドと人間の見分けがつかなくなった世界が舞台。
人間とはなにかを問いかける作品である。
放射線で汚染された荒廃した地球に取り残されたのは、他の惑星へ移住できない負の事情を抱えた人たちである。生きた動物を飼うことがステータスとなっている。
主人公のリックは電気羊を飼っていて、本物を飼うことが望み。
![]() フィリップ・K・ディック/朝倉久志 訳 ハヤカワ文庫 1977年 |
下級警察官のリックは、火星から脱走してきたお尋ね者の人型アンドロイドを殺して賞金を手に入れる賞金稼ぎである。同僚のディブが、脱走したアンドロイドに脊椎をレーザー銃で撃たれて負傷した。脱走した8人のうち2名はすでに廃棄処分になり、残るは6名。リックはデイブの情報を手掛かりに追跡捜査を開始する。
リックはオペラ歌手のプリスを仕留めようとしたところ、逆にレーザー銃を突きつけられ、リックが所属する警察署とは別の警察署に連行さる。危うく有罪にされそうになるが、なんとか逃げ切った。
世界最大のアンドロイド・メーカー、ローゼン協会の娘18歳のレイチェルから、アンドロイド殺しの手助けをしたいとの申し出があった。レイチェルは感情移入度テストで、アンドロイドと判定されている。
アンドロイドと関係を持つことは禁じられているにもかかわらず、リックはレイチェルの誘いにのってしまう。
そして、自ら感情移入度テストを受けると、芳しい成績とは言いい難い結果だった。リックは迷いを感じはじめた。
その後、リックはプリスのほか2人を仕留める。
いよいよアパートの立てこもった最後の3人をやっつける段になった。3人は、放射能で脳をやらたピンボケのイジドアをアゴで使っていたが、これが裏目に出てしまい、リックに殺される。
リックは懸賞金で、やっと望みの本物の山羊を手に入れるが、何者かに殺されてしまう。
見分けがつかない人間と人型アンドロイドの違いを著者はどう描き分けているのか。リックにしても、不満ばかり並べる妻にしても、ピンボケのイジドアにしても、相手を思いやる気持ちがある。つまり優しさがあるということだ。アンドロイドは自分や自分たちの利益を追求するだけで、思いやる気持ちは希薄である。
先の見えないリックの人生、分裂症気味の登場人物あるいはアンドロイドたち、そして解決しない結末を、さらりとした表現で描いている。→人気ブログランキング
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