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2016年6月

2016年6月23日 (木)

師走の扶持 澤田瞳子

薬草を育成し乾燥させ販売したり、調合して服用させたりする薬草師という特殊な職業の女性を主人公にした、澤田瞳子の短編連作集第2弾。
元岡真葛(まくず)は、京都鷹ヶ峰で幕府直轄の薬草園を営む藤林家に養われている女薬草師。その技量は医師すら一目おく。
まだ23歳の真葛がそうした技量を習得したのは、幼い頃から、飽くなき探究心を持って、薬草園の仕事に好んで携わったからに他ならない。
Image_20201206092801師走の扶持: 京都鷹ヶ峰御薬園日録
澤田 瞳子
徳間書店
2015年

真葛の父・玄巳(げんい)は、3歳の真葛を薬草園の藤林信太夫(のぶだゆう)に託し、医術の研鑽のため長崎に赴く途中で行方知れずとなった。それ以来、信太夫が養父となった。
子持たずの信太夫は、匡(ただす)を妻子ぐるみで養子に迎え藤林家6代を継がせた。
信太夫が亡くなると、後を追うように妻が亡くなり、真葛は薬草園を出ることを考えたが、匡から懇願され薬草園にとどまることになった。

「糸瓜の水」
小石川御薬園の岡田家と隣り合わせの芥川御薬園の芥川家は犬猿の仲。道端で倒れている岡田家の奉公人・辰次の母親を真葛は芥川家に連れていって、薬草を煎じて飲ませた。ところが、処置のあとその母親が瀕死の容態となる。
「瘡守」
餅屋で見かけた旅籠千鳥屋のお佐和は梅毒にかかっていた。夫に冷たくされているという。真葛が千鳥屋の夫を見る限り、妻を邪険にするような人物ではない。真葛は夫婦の危機を救う。
「終の小庭」
真葛は隠居を控えたお供の喜太郎を娘夫婦の家に連れて行く。娘夫婦が居留守を使う理由は?
「撫子ひともと」
義姉の初音が持ってきた縁談の唐突さに、23歳の真葛は鼻を曲げた。そんな真葛のもとに、妊娠した娘が相手からもらった丸薬を持って現れる。奇しくも真葛の縁談の相手が娘を妊娠させた男だった。
「ふたおもて」
定平はもと加賀藩藩医だった。30過ぎに職を辞し、京で薬屋亀甲屋をはじめた。店を息子に任せ、もっぱら生薬の仕入れに諸国を旅していた。定平は藩医だった頃、世話になった医師・影山の妻お通に出会う。落ちぶれて旅籠の飯炊き女に身をやつしていたお通の面倒をみることにした。
「師走の扶持」
真葛は、咳の止まらぬ患者の往診を頼まれた。患者は真葛の叔父御にあたる人物。深刻な後継問題を抱えていた。→人気ブログランキング

月人壮士(つきひとおとこ)/中央公論新社/2019年
落花/中央公論新社/2019年
秋萩の散る/徳間書店/2016年
師走の扶持 京都鷹ヶ峰御薬園日録/徳間書店/2015年
ふたり女房 京都鷹ヶ峰御薬園日録/徳間文庫/2016年
京都はんなり暮らし/徳間文庫/2015年
与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記/光文社/2015年
若冲/文藝春秋/2015年
満つる月の如し 仏師・定朝/徳間文庫/2014年
泣くな道真 ―太宰府の詩―/集英社文庫/2014年

2016年6月19日 (日)

ストーカー アルカジイ&ボリス・ストルガツキー

地球外生命体との接触がテーマ。
生命体がなんの目的で訪れたのか、これから何が起こるのか、手がかりがまったくないまま物語は進んでいく。
859fad2e58e548cfb187fd3425472171ストーカー
アルカジイ・ストルガツキー ボリス・ストルガツキー/深見 弾 訳
ハヤカワ文庫
1983年

〈来訪ゾーン〉は地球に6箇所あり、そのひとつがソビエトのとある町・ハーモントにある。〈ゾーン〉に潜り込み、持ち出せるものはなんでも手当たり次第に持ち出してくる向こう見ずな連中のことを、ハーモントではストーカーと呼んでいる。

ストーカーはいい稼ぎになることもあるが、死と隣り合わせの危険な仕事であり、そもそも違法だ。

主人公のレッドとともに〈ゾーン〉に入ったキリールは、突然なくなった。両脚が腐った奴もいる。起こらずピンピンしている者もいる。家族が原因不明のひどい目に会うこともある。レッドの娘〈モンキー〉は口をきけなくなった。父親はボケた。

〈ゾーン〉には来訪者が潜んでいるのかいないのか、塵芥や腐敗物がだらけだったり、火山のように熱いところがあったり、不潔で危険極まりないところ。しかし地球には存在しないお宝が眠っている。

レッドは再び〈ゾーン〉に潜り込むが、命からがら脱出した。
不条理はなにも解決されないままだ。→人気ブログランキング

2016年6月14日 (火)

音楽の聴き方

吉田秀和賞(第19回 2009年)を受賞した名著。
〈私たちは皆、特定の歴史/社会の中で生きている以上、音楽の聴き方もまた、そこからバイアスをかけられるのはいかんともしがたい。自由に音楽を聴くことなど、誰にもできない。ただし自分自身の聴き方の偏差について幾分自覚的になることによって、もっと楽しく音楽と付き合うことができるのではないか。〉
これがサブタイトルに掲げた「聴く型」であり、著者がもっとも強調したいことである。

Image_20210221145701音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉
岡田 暁生
中公新書
2009年

「音楽は言葉にできない」とは、ドイツロマン派の詩人たちの発想だが、それが今日まで、私たちの音楽の聴き方・語り方に縛りをかけているという。実は言葉なくして音楽を体験することはできないというのが、著者の主張。
そして音楽を語る語彙は、できるだけ身体に響くものがいいという。音楽は比喩を用いずして語ることは不可能な芸術である。ゆえに、「〜のような」という表現だらけになる。

ピエール・バイヤールのいう「内なる図書館」は、これまでに読んだ本、読んだけれど忘れてしまった本、噂に聞いたことがある本、どこかでその批評を読んだことがある本などについての諸々の記憶の断片から、成り立っている(『読んでいない本について堂々と語る方法』)。音楽についても、この「内なる図書館」があるという。

著者が音楽を聴くときのただひとつの目安は、「音楽を細切れにすることへのためらいの気持ちが働くか否か」ということである。何かしら立ち去りがたいような感覚があるかどうか。自分にとってそれが意味/意義のある音楽体験であったかを測るサインは、これ以外ない、と著者は断言する。
CDを聴くこと中断しても何の痛痒も感じなかったとすれば、その人にとって「音楽=生命」ではなく、ただの「シグナル=モノ」だったということである。

ある音楽を聴いていてどうもよくわからないというケースの大半は、「音を音楽として知覚するための枠組みを持っていないことに起因する。
クラシック音楽のかなりの部分、前衛音楽のほぼすべてが、多くの人にとって「退屈」な理由は、この参加できないということに尽きると著者はいう。聴く型を持っていないということである。
「音楽の聴き方」は、「音楽の語り方」を知ることに他ならない。音楽を「して」みれば、いくらでも語ることは出てくるはずであるという。
巻末には、聴き上手になるためのマニュアルが箇条書きになって列挙されている。→人気ブログランキング

2016年6月12日 (日)

獣の奏者1闘蛇編 上橋菜穂子

「闘蛇」と「王獣」という架空の獣を登場させ、それを軸に壮大なファンタジーを繰り広げる、著者の発想力と筆力に脱帽する。
エリンの母は闘蛇を死なせた責任を負って、獣ノ医術師としての職を解かれ処刑されることになった。母は〈霧の民(アーリヨ)〉である出自や、死んだ夫とのことを娘のエリンに話した。
母は縛られて重りをつけられ野生の闘蛇がうようよいる沼に投げ込まれた。
エリンは短刀を懐に沼に潜り母の縄を切った。野生の闘蛇が襲ってくるはずだが、母は掟を破って操蛇の指笛を吹いたのだった。
エリンは闘蛇にまたがって逃げた。
Image_20201130123601獣の奏者 1闘蛇編
上橋菜穂子
講談社文庫
2009年

蜂飼いのジョウンは湖畔で身体中に傷を負ったエリンを助けた。
〈霧の民(アーリヨ)〉の緑の目をしたエリンと暮らすことは、災難を背負うことになるかもしれないことを承知の上だ。
かつて王都の高等学舎で教導師長だったジョウンはエリンの聡明さに舌を巻いた。

王宮が無防備でいられるのは、ひとえに大公(アルハン)が代々、多大な犠牲を払ってリョザ神王国を守ってきたおかげだというのが、大公の口癖だ。真王(ヨジエ)の臣民どもは、武人を血で穢れた成り上がりと思っているが、近隣の国々から蹂躙されずに、これまで平穏な暮らしをしてこられたのは大公を筆頭とする武人のおかげなのだ。
あえて穢れた闘蛇を操り、身を血で汚し国をまもり富ませてきた。そのおかげで真王はその手を血で汚すことなく、清浄な森の奥に鎮座しておられるのだ。

それゆえ、大公領民は真王国から派遣されてくる官僚たちや、貧しいくせに気位ばかり高い真王領の臣民たちに、血で穢れ征服した国々と血を交えたとして見下されることに不満を感じていた。この不満から生まれたのが〈血と穢れ(サイ・ガルム)〉という集団である。真王こそ国を分裂させ、発展を滞らせている元凶である主張し真王を弑し大公を王位につけることが、リョザ真王国を繁栄に導く道であると信じていた。
一方、新王の臣下の中から武芸に秀で忠義に厚い者を選んで、真王を守らせた。これが〈堅き楯(セ・ザン)〉のはじまりである。

真王(ヨジエ)は、母から娘へと伝えられていく位である。
真王ハルミヤの60歳の誕生日の祝いに、大公と長男シュナンが参じた。真王に献上される王獣16頭の中に幼獣が1頭混じっていた。
王獣の檻が進むとき、木の上から矢が放たれ幼獣をかすめ傷を負った。幼獣は治療のためカザルム王獣保護場に引き取られた。

14歳となったエリンは、カザルム王獣保護場の〈入舎ノ試し〉を受けて合格した。ジョウンの同僚だった教導師長のエルサは、エリンに傷ついた幼獣の世話を任せらることにした。
衰弱しきった幼獣に、エリンは肉を食べさせようとあれこれ試し、食べさせることができた。そして、エリンは他の人間ならば音無の笛を吹いて眠らせなければ近づけない幼獣リランを、笛なしで手なずけてしまったのだった。

王獣や闘蛇は政治的な動物。王獣や闘蛇に関わることは、その国の政治に関わること。幼獣を手なずけたことで、エリンは真王と大公の政治的綱引きに、関わらざるをえなくなっていく。→人気ブログランキング

精霊の守り人
闇の守り人
夢の守り人
虚空の旅人
神の守り人来訪編
神の守り人帰還編
蒼路の旅人 天地の守り人 第1部 ロタ王国編
天地の守り人 第2部 カンバル王国編
天地の守り人 第3部 新ヨゴ皇国編
獣の奏者1 闘蛇編
獣の奏者2 王獣編
獣の奏者3 探求編
獣の奏者 外伝 刹那 流れ行く者 守り人短編集
バルサの食卓
孤笛のかなた
鹿の王
水底の橋 鹿の王 

2016年6月 7日 (火)

あなたの人生の科学 デイヴィッド・ブルックス

白人の上流家庭に育ったハロルドと、うつ気味の中国系の母親と家に寄りつかないメキシコ系の父親の家庭で育ったエリカの一生をたどりながら、主に人間の意思決定の仕組みを解き明かしていく。著者は、脳科学、社会学、心理学、医学、生物学、遺伝学、政治学、経済学、ギリシャおよびドイツ哲学、小説、戯曲、映画などについての旺盛な知識に基づいて解説を加えていく。

Image_20201204102601あなたの人生の科学(上)
デイヴィッド・ブルックス
夏目 大 訳
ハヤカワNF文庫
2015年
Image_20201204102701あなたの人生の科学(下)

ジャン・ジャック・ルソーの教育学の名著『エミール』の手法を真似たという。ルソーはエミールと家庭教師のやりとりを通じて幸福とはいかなるものかを論じた。
本書の最大の目的は、人間が幸福になるうえで無意識がいかに重要な役割を果たすかを論じることだという。著者は、日常生活における私たちの行動を支配しているのは意識ではなく無意識であると、無意識の重要さを強調している。
上巻では、ハロルドとエリカが登場する前に、それぞれの両親の出会い、結婚、子育て、そして家庭環境が語られる。

大学を卒業しコンサルタント会社に入社したエリカは、頭脳明晰であっても目の前の問題にうまく対処できない同僚の男たちに愛想をつかす。エリカは一念発起してコンサルタント会社を起業し、大学院を卒業して職に就ていなかったハロルドに出会う。
ここで下巻にバトンタッチされる。

エリカはハロルドをパートナーとして雇い、やがてふたりは恋に落ち結婚する。会社の経営は順風満帆にみえたが、不況によりあえなく倒産してしまう。エリカはケーブルテレビ会社へ就職し、ハロルドは博物館に勤める。エリカが勤めた会社はM&Aを繰り返し大きくなるが、拡大しすぎて経営危機に陥る。エリカはその会社のCEOに就任し、会社を立て直す。
やがて、エリカはマイノリティ出身の優秀な人材を探していた大統領候補の陣営からスタッフとして請われ、選挙運動に加わる。候補の当選後、エリカはホワイトハウスに入り、次席補佐官や商務長官の公職で目覚しい働きをし、ダボス会議にも出席する。
一方、ハロルドはエリカのおかげでホワイトハウスのシンクタンクで働くことになる。ワシントンDCに来てハロルドが気づいたのは、社会学や心理学の最新の研究成果が、政治の世界にはほとんどといっていいほど取り入れられていないことである。
ハロルドはシンクタンクが発行する専門誌にエッセイを連載する。テーマはテロの脅威、軍事戦略、エイズ問題、アメリカの住宅問題など多岐にわたる。ハロルドの目を通じて、著者の理想の社会づくりが語られる。

ハロルドは仕事に忙殺され家を空けるエリカとのあいだに距離を感じるようになり、アルコール依存症になる。エリカは魔がさして不倫に走るが、この危機をふたりはどうにかやり過ごす。ここで著者はエリカの行動を心理学的に分析し、道徳と無意識について触れる。ある行動が道徳にかなうか否かは、直感により反射的に判断されることが多いと説く。

ふたりは引退し、ヨーロッパの名所旧跡を尋ね歩くツアーを企画して、ハロルドがガイドを務める会社を起こす。やがて、それからもふたりは引退し、著者の都合により波乱万丈の人生を送らされる羽目になったエリカは、ハロルドの最期に立ちあうのである。

本書は、早いころに熟読していれば、人生が少し違ったものになっていたかもしれないと思わせる処世の手引書である。→人気ブログランキング

2016年6月 4日 (土)

幼年期の終り アーサー・C・クラーク

ある日、巨大宇宙船の一群が、ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワ、ローマ、ケープタウン、東京、キャンベラなどの大都市に現れた。
ある国がミサイルを発射したが、宇宙船は無傷であり、その国は崩壊させられた。
地球外生命体はオーバーロード(上帝)と呼ばれ、その代表であるカレルレン総督により、地球は支配されはじめた。しかし、オーバーロードの目的は明らかではなかった。
やがて人類は中空に停止し続ける宇宙船を、太陽や月と同じような天体として受け止めるようになった。

Photo_20200803075301幼年期の終り

アーサー・C・クラーク
福島正美 訳
ハヤカワ文庫
1979年 ✴︎10

宇宙船が地球に現れてから5年が経過し、国同士の争いは起こらなくなり、地球は平和になった。
そして、ついにカレルレン提督が人類の目の前に姿を現した。
その姿は、皮に似た強靭な翼、短い角、さかとげのある尻尾を備えた巨体だった。人類が悪魔ととらえる姿とそっくりであった。

宇宙船が飛来して50年経つと、世界は単一国家になり、科学の発達はなくなった。
ひょんなことから、一流のピアニストであり天文学を学ぶジャンは、地球から40光年離れたオーバーロードの生まれ故郷を知ることになった。
ジャンはオーバーロードの帰還船に潜り込んで密航する計画を立てた。
オーバーロードの国に着いて戻ってくるまでに、ジャン自身には2か月の時間しか経たないが、地球では80年が経過する勘定になるのだ。
カレルレンは、定例会見で帰還船に紛れ込んだ人間がいたことを発表した。

やがてオーバーロードの目的が見えてきた。
地球は放っておけば滅びた。それをわれわれは救ったのだと。人類に危害を加えるためでも交流するためでもなく、人類を幼年期から青年期に進化させるための手助けをするために来たのだという。
しかし、最後に、オーバーロードが抱えるアイロニカルな進化の問題が明らかになる。→人気ブログランキング

2016年6月 1日 (水)

カラヴァッジョ展@国立西洋美術館

若冲展の行列をフルマラソンに例えるならば、カラヴァッジョ展(2016年3月1日〜6月12日)の行列は、チケット売り場に50名ほどが並んでいたものの、クールダウンのようなものだった。

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ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610年)が活躍したのは、ルネッサンスが終わりバロックに繋がろうとする、マニエリスムと呼ばれる、いわば中だるみの時代。しかし、カルヴァッジョ自身は時代の流れとは関係なく、美術史に燦然と輝く足跡を残し、その天才ぶりを誇示している。カラヴァッジョは下書きなしで直接キャンバスに描いていたという。

本美術展には、カラヴァッジョの真筆が10点ほどあり、あとは、カラヴァッジョの画法を模倣した同時代の、あるいは後世のカラヴァジェスティ(カラヴァジェスキ)たちの作品が展示されている。

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ガラヴァッジョはイタリアの北部、ミラノの出身だから、オランダやベルギーなどの影響を受けている。
『女占い師』は、オランダの風俗画につながるテーマである。指輪を外して盗もうとするロマ族(ジプシー)の女。男はまんざらでもなさそうな顔をしている。
『トカゲに噛まれる少年』のように、カラヴァッジョの特徴は、一瞬の動きを写真のように切り取って描くことだという。

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『ナルキッソス』はトランプの構図である。
『果物籠を持つ少年』は、あえてピントを果物に合わせている。
『バッカス』は、赤ワインの入ったヴェネチアンワイングラスを回して、けだるそうにしている少年が描かれている。バッカスだから神様らしく描かなければならないところを、ぽっちゃりでマッチョに描いている。

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『法悦のマグダラのマリア』は、400年ぶりにカラヴァッジョの真作と認定され、全世界に先駆けて今回日本で公開されたという。カラヴァッジョ自身の改悛の情を表しているのではないかとのうがった見方もある。
半開きの口に白目をむき出し、青白い肌を晒した女性の姿は、まさに「法悦」の姿である。
こうした名画が、400年ぶりカラヴァッジョの真作として認められるという「事件」からうかがわれることは、ヨーロッパには有名画家の真作の予備軍がまだまだあるということだろう。
カラヴァッジョの光と影の使い方はオランダのレンブラント(1606〜1669年)らに影響を与えたという。

カラヴァッジョは、やんちゃ、アドレナリン出っぱなし、喧嘩っ早い、禁止されているにもかかわらず常に剣を持っていた、警察沙汰に何度もなっている、といういわくつきの人物であった。カラヴァッジョの悪行が記載されたバリオーネ裁判所の記録が展示されていた。

ついには、テニスの試合の掛け金をめぐって喧嘩の相手を絞め殺した。警察に追われる身になり4年間の逃亡生活の末、なんとか罪を免れそうになり、シチリア島からローマに帰る途中で熱病で亡くなったという。38歳という若さだった。

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