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2016年6月 1日 (水)

カラヴァッジョ展@国立西洋美術館

若冲展の行列をフルマラソンに例えるならば、カラヴァッジョ展(2016年3月1日〜6月12日)の行列は、チケット売り場に50名ほどが並んでいたものの、クールダウンのようなものだった。

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ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610年)が活躍したのは、ルネッサンスが終わりバロックに繋がろうとする、マニエリスムと呼ばれる、いわば中だるみの時代。しかし、カルヴァッジョ自身は時代の流れとは関係なく、美術史に燦然と輝く足跡を残し、その天才ぶりを誇示している。カラヴァッジョは下書きなしで直接キャンバスに描いていたという。

本美術展には、カラヴァッジョの真筆が10点ほどあり、あとは、カラヴァッジョの画法を模倣した同時代の、あるいは後世のカラヴァジェスティ(カラヴァジェスキ)たちの作品が展示されている。

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ガラヴァッジョはイタリアの北部、ミラノの出身だから、オランダやベルギーなどの影響を受けている。
『女占い師』は、オランダの風俗画につながるテーマである。指輪を外して盗もうとするロマ族(ジプシー)の女。男はまんざらでもなさそうな顔をしている。
『トカゲに噛まれる少年』のように、カラヴァッジョの特徴は、一瞬の動きを写真のように切り取って描くことだという。

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『ナルキッソス』はトランプの構図である。
『果物籠を持つ少年』は、あえてピントを果物に合わせている。
『バッカス』は、赤ワインの入ったヴェネチアンワイングラスを回して、けだるそうにしている少年が描かれている。バッカスだから神様らしく描かなければならないところを、ぽっちゃりでマッチョに描いている。

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『法悦のマグダラのマリア』は、400年ぶりにカラヴァッジョの真作と認定され、全世界に先駆けて今回日本で公開されたという。カラヴァッジョ自身の改悛の情を表しているのではないかとのうがった見方もある。
半開きの口に白目をむき出し、青白い肌を晒した女性の姿は、まさに「法悦」の姿である。
こうした名画が、400年ぶりカラヴァッジョの真作として認められるという「事件」からうかがわれることは、ヨーロッパには有名画家の真作の予備軍がまだまだあるということだろう。
カラヴァッジョの光と影の使い方はオランダのレンブラント(1606〜1669年)らに影響を与えたという。

カラヴァッジョは、やんちゃ、アドレナリン出っぱなし、喧嘩っ早い、禁止されているにもかかわらず常に剣を持っていた、警察沙汰に何度もなっている、といういわくつきの人物であった。カラヴァッジョの悪行が記載されたバリオーネ裁判所の記録が展示されていた。

ついには、テニスの試合の掛け金をめぐって喧嘩の相手を絞め殺した。警察に追われる身になり4年間の逃亡生活の末、なんとか罪を免れそうになり、シチリア島からローマに帰る途中で熱病で亡くなったという。38歳という若さだった。

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