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『そして誰もいなくなった』 アガサ・クリスティー

イギリスの孤島に招待された10人が、マザーグースの童謡のとおりに、次々に殺されていく。しかも、殺されるたびにダイニングにおかれた10個の人形が、ひとつずつ消えていくというクローズド・サークル物の代表作。
原著は1939年に発刊された。原題は、And Then There Were None。
日本語訳は、同年、清水俊二により『死人島』というタイトルで、雑誌『スタア』に連載された。

招待主が姿を現さないまま、初日の晩餐がはじまった。 晩餐が終わる頃、「あなた方は、次に述べる罪状で告発されている」と、レコードから甲高い声が流れた。誰もが脛に傷もつ身なのだ。

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー/青木久惠 訳
ハヤカワ文庫
2010年11月

晩餐のあと無軌道な若者(自動車で子ども2人を轢き殺した)が毒殺された。翌朝、執事の妻(発作を起こした老女を見捨てて死なせた)がベッドの中で死んでいた。海は荒れ始め、残った者たちは島から脱出できないことを知る。
海辺にいた退役将軍(妻の愛人の部下を死地に向かわせた)が後頭部を殴打され殺された。
殺人が起こるたびに人形がひとつずつ減っていく。
残った7名は、島へ招待されたのは自分たちを殺すためであり、自分たちの中に犯人がいると思うようになった。
そうこうしているうちに、蜂の刺傷騒ぎに乗じて、年増女(使用人に厳しく当たり自殺に追いやった)が毒薬を注入され殺された。
翌朝、執事(妻と同じように、発作を起こした老女を見捨てて死なせた)が洗濯室で後頭部を斧で割られて殺された。老判事(陪審員を誘導して無実の被告に死刑判決を出させた)がピストルで額を撃ち抜かれ殺された。そして医師(酔って手術をして患者を死なせた)が海で溺死した。
残った3人はそれぞれが殺人鬼ではないかと疑心暗鬼に陥る。
元警部(無実の人物に銀行強盗の罪を負わせ死に至らしめた)は大理石のクマに押しつぶされた。元陸軍大尉(アフリカで食料を奪い21人を死なせた)は女教師とのピストルの奪い合いで射殺された。
そして女性教師(病弱な子供を泳がせ溺死させた)は首を吊って自殺した。

スコットランド・ヤードが館を捜査すると、首を吊るために足台として使った椅子が、壁際に片付けられていた。殺害されたもののうち何人かが日記を書いて、おおよその謎が解決したが、どうしても辻褄が合わないことがあった。 そして、トロール船の船長から犯人の手記と思われる文書がスコットランド・ヤードに送付され謎が解ける。

恐怖感や緊迫感が希薄なのは翻訳のせいだろう。言い回しが軽い。
女性教師が過去の事件を振り返る場面を、青木久恵と清水俊二との訳と比較してみると、それがわかる。
〈夏休み前の学期は、本当にしんどかった。ヴェラ・クレイソーンはつくづく思った。〉青木久恵 訳
〈はげしい教師の勤めに疲れきっていたヴェラ・クレイソーンはいつも考えるのだった。〉清水俊二 訳
京都弁の「しんどかった」はイエローカードだろう。

ねずみとり』1950年
さあ、あなたの暮らしぶりを話して』1946年
そして誰もいなくなった』1939年
アクロイド殺し』1926年

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