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『ミスター・メルセデス』スティーヴン・キング

霧が煙る早朝、市民センターで催される就職フェアの開場を待っていた行列に、メルセデス・ベンツが突っ込み、8人の死亡者と多数の負傷者を出す事件が起こった。
担当刑事だったビル・ホッジスは定年退職し、事件は迷宮入りとなっていた。
凶器となったメルセデスSL500は、市の高級住宅地に建つコンドミニアムに住むミセス・トローニーが所有していたもの。ミセス・トローニーは路上駐車したさいに、鍵をかけ忘れてはいないと主張したが、警察もマスコミも彼女を疑っていた。
そして、ミセス・トローニーは巨額の遺産を妹のジャネルに残し、高齢の母親をおいて自殺してしまった。犯人が彼女にコンタクトをとり自殺に追い込んだのだ。

ミスター・メルセデス 上
ミスター・メルセデス
スティーヴン・キング
白石 朗 訳
文藝春秋
2016年8月
ミスター・メルセデス 下
ミスター・メルセデス
スティーヴン・キング
文藝春秋

妻と離婚し娘が出ていった家で、ひとりで暮らすホッジスは自殺を考えたりもした。ある日、ホッジスのもとにメルセデス・キラーと名乗る男から、挑戦状ともとれる手紙が届く。それで、ホッジスは俄然、生きる張り合いができた。

「同じことをまたやりたいなんて気持ちがこれっぽっちもない。一回やれば充分なんだ」と手紙には書いているが、メルセデスで味をしめた犯人は、前より大規模な人殺しを企てるはずだと、ホッジスは踏んでいた。

ミセス・トローニー亡きあと、コンドミニアムで暮らす妹のジャネルの依頼もあって、ホッジスはメルセデス・キラーを捕まえようと動き出す。私立探偵の免許を持たない退職刑事が、事件を捜査することは違法行為法だが、そんなことで躊躇していられない。

犯人は、退職刑事の行動を行動心理学者も顔負けの緻密さで分析していた。それというのもホッジスをつぶさに観察していたからだ。
犯人の正体は早々と明らかにされる。犯人はフレイディ・ハーツフィールド、家電量販店の店員で、コンピューターのトラブルを出張して解決するサイバー・パトロールを担当していた。さらに、もうひとつの仕事を持っていて、移動販売車で町をゆっくり巡回するアイスクリーム・マンでもあった。

ホッジスは、ハーバード大学へ進学する予定の黒人高校生のジェロームと、ジャネルの従姉妹で抗うつ剤レクサプロを服用する40歳過ぎのホリーの協力を得て、いかれた犯人を洗い出す。

キングはホラーのイメージが強いが、本書はホラーっけなしの長編ミステリ。もちろん、本書にはキングが得意とする「下品ネタ」もそこかしこに散りばめられている。
「訳者あとがき」によると、本書はアメリカのミステリ小説の最高峰であるエドガー賞(長編部門、2015年)を受賞した。さらに、本書に登場したホッジス、ジェローム、ホリーのトリオが活躍する、第2作『Finders Keepers』(2015年)、第3作『End of Watch』(2016年)が、アメリカですでに刊行されベストセラーになっていて、間もなく日本語訳が発刊されるという。大いに楽しみだ。

ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
書くことについて
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