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2016年11月15日 (火)

6度目の大絶滅 エリザベス・コルバート

地球史において、かつて5度の大絶滅が起こり、それらは「ビッグファイブ」と呼ばれている。「ビッグファイブ」のうち3つは原因が判明している。
最初の大量絶滅は、大半の生物が水の中で暮らしていたオルドビス紀後期(4億5千万年前)に起きた。氷期によってもたらされたとされる。
史上最大の大量絶滅は、ペルム紀末(2億5千万年前)に起きた。大量の二酸化炭素が地球温暖化をもたらし、海水に溶けた二酸化炭素が海水の酸性化を招いたことが原因とされる。

一番最近で最も有名な大量絶滅は、白亜紀の終わりごろ(6千5百万年前)に起こり恐竜が消滅した。ユカタン半島およびメキシコ湾に巨大隕石が衝突したことが原因であるとされる。というように、絶滅の統一理論はない。
そして現在6度目の大絶滅が進行中である。

66度目の大絶滅
エリザベス・コルバート/鍛原多惠子 訳
NHK出版
2015年

著者は、パナマでカエルの大量死を目の当たりにし、ビッグファイブの最初の絶滅の証拠を求めてスコットランドに渡る。地中海の島では熱水噴出孔からの熱水による海水温の上昇の影響を調査し、グレートバリアリーフでは壊滅的な被害を受けているサンゴ礁を調べる。アンデス山脈の樹林帯では、樹木の組成の変化を知らされる。マサチューセッツの洞窟に入りコウモリの大量死を見届け、シンシナティ動物園でサイの人工授精に立ち会う。こうして著者は各地に出向き長期にわたるフィールドスタディを積み重ねていく。

18世紀末、フランスの博物学者キュヴィエは「現生ゾウと化石ゾウの種について」と題された公開講義で、生物の絶滅の事実を知らしめることに成功した。それまでは、種が絶滅するという概念はなかったのである。
種の誕生にかかわるダーウィンの理論は種の消滅の理論でもあったが、ダーウィンは絶滅についてほとんど関心をはらわなかった。

ショッキングな数字が並べられている。

現在、両生類はもっとも絶滅の危機に瀕していると考えられており、その絶滅率は背景絶滅率の4万5千倍という試算もある。ところがその他の多くの動物種の絶滅率も両生類に迫りつつある。造礁サンゴ類の1/3、淡水生貝類の1/3、サメやエイの仲間の1/3、爬虫類の1/5、哺乳類の1/4、鳥類の1/6がこの世から消えようとしていると推定される。・・・生命の消失にはさまざまな理由がある。しかし、その過程を丹念に追っていけば、必ず同じ犯人ーあるひ弱な種ーにたどり着く(つまり、人間である)。

ちなみに、「背景絶滅率」とは、100万種につき年あたりの絶滅種数で表される。哺乳類の背景絶滅率は、約0.25と考えられている。つまり、現在約5500種の哺乳類がいるので、背景絶滅率に従えば大雑把に言って700年ごとに1種が消えることということになる。

考古学的な証拠から、ネアンデルタール人はヨーロッパまたは西アジアで進化し拡散したが、河川や海などの障害物があったところで止まっている。現生人類のみが、そうした障害物を越え、あるいは陸の見えない海に漕ぎ出していった。そこにはなにか狂気じみたものがあるという。

ネアンデルタール人をはじめとする古人類の絶滅も現生人類が引き起こした。さらに、現代における類人猿の生存数の極端な減少も、森林伐採を行ったわれわれが主犯である。
現生人類が地上に現れたときから、その影響で種の絶滅がはじまっていることが、最近明らかになったという。人類は過剰殺戮犯なのだ。

著者は6度目の大絶滅を食い止める処方箋を示すわけではない。ただ、絶滅危惧種を救おうと懸命に努力する人びとがいることに、かすかな光を見出しているのである。→人気ブログランキング

6度目の大絶滅/エリザベス・コルバート/NHK出版/2015
サイボーグ化する動物たち/エミリー・アンテス/白揚舎/2016
外来種は本当に悪者か?/フレッド・ピアス/草思社/2016
爆発的進化論/更科功/新潮新書/2016
ゲノム編集とは何か?/小林雅一/講談社現代新書/2016
がんー4000年の歴史/シッダールタ・ムカジー/早川NF文庫/2016
破壊する創造者ーウイルスが人を進化させた/フランク・ライアン/早川NF文庫/2014
生物と無生物のあいだ/福岡伸一/講談社現代新書/2007
人はどうして死ぬのかー死の遺伝子の謎/田村靖一/幻冬舎文庫/2010
できそこないの男たち/福岡伸一/光文社新書/2008
二重らせん/ジェームス・ワトソン/講談社文庫/1986

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