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『秋萩の散る』澤田瞳子

著者が得意とする奈良時代を舞台とした珠玉の5話。時代を彷彿とさせる漢語の使い方が巧みで、いずれも長編に匹敵する読み応えがある。

「凱風の島」
6度目の日本渡来に挑む鑑真を乗せて4艘の帆船は、沖縄に到着した。鑑真招聘は日本(ひのもと)の大願であるが、遣唐大使・藤原清河は、玄宗皇帝の許可なく鑑真を乗せた副使・大伴古麻呂に、批判的であった。一方、唐に30年間滞在し唐で大出世した阿倍仲麻呂は、齢55歳になる。帰国しても仕官はかなわないだろう。 清河も仲麻呂も帰国後厚遇されることはないだろう。親の七光りで遣唐使となり、たった1年で帰国する藤原刷雄(よしお)は複雑な思いにかられた。

秋萩の散る (文芸書)
秋萩の散る
posted with amazlet at 16.11.08
澤田 瞳子
徳間書店
2016年10月

「南海の桃李」
南海の200ある島々に、漂流船に場所を知らせる目的で石碑を建てる。
吉備真備は同じ船で唐より戻った高橋牛養に、そのアイデアをもちかけた。牛養は碑を建てるべく、太宰府に赴任した。碑には、島の名、島内の水場、港の場所、大島や薩摩までの距離、が示されているはずであった。しかし、島にたどり着いた真備は碑がないことに愕然とする。牛養が碑を建てなかった理由はなにか?

「夏芒の庭」
大学寮に在学して4年目の上信(うわしな)は落ちこぼれ。日向の秀才雄依(おより)と同室となる。上信や雄依たちは権力闘争の死闘を目の当たりにする。学生たちのある者は巻き込まれ、またある者は世の不条理を学ぶのだった。

「梅の一枝」
文筆にたけた石上朝臣宅嗣(やかつぐ)は、宮中で「文人乃首(文人の筆頭)」の名をほしいままにしていた。そんな宅嗣の前に安倍女帝(孝謙天皇)の異母弟であるという久世王が現れ、母親は宅嗣の従姉であるという。久世王の存在を気性の激しい孝謙天皇に知られたら命を狙われ、自分にも類が及ぶやもしれないと宅嗣は不安にかられる。なにか手を打とうとするが。。

「秋萩の散る」
安倍女帝の寵愛により比肩する者のいない高職についた道鏡の晩年を描く。権力をほしいままに帝位にまで昇り詰めようとしたとされる道鏡であるが、女帝の崩御後、下野国薬師寺に配流された。道鏡は臆病な老僧として描かれる。

秋萩の散る/徳間書店/2016年
師走の扶持 京都鷹ヶ峰御薬園日録/徳間書店/2015年
ふたり女房 京都鷹ヶ峰御薬園日録/徳間文庫/2016年
京都はんなり暮らし/徳間文庫/2015年
与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記/光文社/2015年
若冲/文藝春秋/2015年
満つる月の如し 仏師・定朝/徳間文庫/2014年
泣くな道真 ―太宰府の詩―/集英社文庫/2014年

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