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2016年12月 4日 (日)

熊と踊れ アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンべリ

長兄レオをリーダーとして、次男フェリックス、三男ヴィンセント、幼なじみのヤスペルの4人組は、軍の武器庫の床を爆破し、二個中隊分の武器と弾薬を手に入れた。それらの武器を、表向き長男が経営し弟たちが従業員として働いている工務店の倉庫に隠した。
そして、4人組はショッピング・センターで現金輸送車を襲い、なんの手がかりも残さず、まんまと現金を強奪した。

さらに、4人組は次々に銀行を襲い、警察を手玉にとった。1日のうちに続けてふたつの銀行を襲ったり、警察の捜査を分断するためにストックフォルム中央駅のコインロッカーに爆弾を仕掛けたり、そのスケールは徐々にエスカレートしていく。手口の無駄のなさ、防犯カメラに写った銃の扱い方、統率のとれた機敏な行動から、「軍隊ギャング」と呼ばれるようになる。

71me612mb5l__ac_ul320_熊と踊れ(上)
アンデシュ・ルースルンド ステファン・トゥンベリ
ハヤカワ文庫
2016年
71me612mb5l__ac_ul320_熊と踊れ(下)
ヘレンハメル美穂  羽根 由 訳
ハヤカワ文庫
2016年

 

もうひとつの軸として語らるレオたちの過去は、物語の重要な鍵を握っている。兄弟は、家族をドメスティック・バイオレンスで支配する父親イヴァンのもとで育った。家族はイヴァンの機嫌を伺いながらの生活が強いられた。

イアヴァンが幼いレオに喧嘩のやり方を教え込むくだりがある。
「相手がひとりでも、ふたりでも、3人でも関係ない。これはな••••••熊のダンスだ、レオ。一番でかい熊を狙って、そいつの鼻面を殴ってやれば、ほかの連中はみんな逃げ出す」タイトルの『熊と踊れ』は、このくだりからつけられた。

「絆」の語源は動物をつなぎとめる縄であるというが、本作のテーマはまさに語源どおりの意味でも「絆」である。
冒頭で、4年ぶりにイヴァンが帰ってきて母親を殴りはじめる。長男のレオが止めに入り、母親が家から飛び出していく。この出来事は、兄弟の精神的なトラウマとなっている。「あの時、ドアを開けてイヴァンを家に入れたのは誰だ」という問いに、兄弟たちはくりかえし苛まれるのだ。

事件を担当するストックフォルム市警察警部ヨン・ブロンクスは、犯人に近づく手がかりがまったくないまま、苦悩する。ブロンクスには父親を殺して服役中の兄とのあいだに、解決されていない問題があった。その兄から事件の手がかりを得ようと面会するが、兄は弟を拒絶するのだった。
ブロンクスは、銀行襲撃の手口はエスカレートしていき、いずれミスを犯し、捜査の糸口がつかめるだろうと読んでいた。

一方、4人組にとって、銀行襲撃で手にした現金に、行員によって赤い塗料をぶちまけられたことが、ケチのつきはじめだった。
そして、4人組の人間関係に不協和音が生じはじめていた。
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