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2017年1月18日 (水)

がん消滅の罠 完全寛解の謎

第15回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。巻末の選評では、4名中2名の選者が、「医療本格ミステリーの大傑作」と賛辞を送っている。
登場人物が描き切れていない感があるとしても、幾重にも仕掛けが施され、最後の1行にも驚きのトリップが仕組まれていて、ミステリの醍醐味を満喫できる。

がん治療の分野で学会では無名に等しい湾岸医療センターが、有名人や有力者たちに支持されている。その理由は、がんの早期診断と進行がんに対する独自療法により、飛びぬけた治療成績を上げているからだ。
呼吸器外科医の宇垣玲奈が手術を担当している。

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岩木 一麻
宝島社   
2017年

日本がんセンターに勤務する呼吸器内科医の夏目が末期がんで余命半年と診断したシングルマザーが、完全寛解したという。夏目が書いた診断書によって保険給付金を受け取った末期がんの患者のうち完全寛解したケースは、このシングルマザーを含め4人いると告げられ、夏目は「ありえない」と思った。
高校時代からの友人で保険会社に勤める森川は、夏目に疑いの目を向けたが、夏目は潔白だった。
保険に加入して時間をおかず、保険金の支払い請求がされるケースを、保険会社は「早期事故」と呼び、慎重な調査を行う。いずれのケースも不正は見つからなかった。

 

湾岸医療センターの理事長は、10年前に夏目が大学に在籍していたときに、師事していた西條教授だった。教授が、突然、大学を辞めると言い出したとき、夏目が辞職の理由を尋ねると、「医師にはできず、医師でなければできず、そしてどんな医師にも成し遂げられなかったことをやるためです」と答えた。
教授室のホワイトボードに、「neoplasm(がん)」、「救済」、「TLS(腫瘍崩壊症候群)」という字が書かれていた。TLSとは、抗がん剤が著しい効果を発揮した際などに、腫瘍内部に蓄積されていた核酸、リン酸、カリウムなどが一気に血中に流れ出し、重度の電解質異常や急性腎不全を引き起こす病態のことである。これらの言葉に謎を解く鍵が隠されている。

森川が、湾岸医療センターに絡んだ保険金請求事例の社内データを調べると、二つの謎が浮かび上がった。
ひとつは、低所得者が末期がんと診断され、高額の保険金を手にしたあと、がんが完全寛解しているケースがいくつもあること。もうひとつは、早期がんと診断された有名人や社会的地位の高い患者が手術を受けたあと、転移が見つかり、抗がん剤治療を受ているケースが多いことである。
夏目たちは、二つの謎のからくりを解明しようと、湾岸医療センターの西條理事長と宇垣医師を探りだす。→人気ブログランキング

「このミステリーがすごい!」大賞受賞作
がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木 一麻(2016年)
女王はかえられない』降田 天(2014年)
チーム•バチスタの栄光』 海堂 尊 (2005年)

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