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2017年1月12日 (木)

開かせていただき光栄です 皆川博子

第16回(2012年度)日本ミステリー文学大賞(光文社主催)の受賞作。
舞台は18世紀前半のロンドン。
私的解剖教室を開いている外科医のダニエル・バートンが弟子たちと、妊娠6ヶ月の若い女性の解剖を手がけているところに、警察が踏み込んでくる。墓から違法に盗み出された屍体を探しているのだ。弟子たちは屍体を隠し、犬を解剖していたようにとり繕った。
警察の追求はかわしたものの、次に現れたのが、盲目ながら鋭い感と推理力で知られる治安判事のジョン・フィールディングだった。ジョンには有能な助手である姪のアンがついていて、ふたりのコンビに孫助手のアボットが加わって謎を解いていく。

Photo_20201124140601開かせていただき光栄です 
皆川博子
ハヤカワ文庫
2013年

女性の屍体は、いつの間にか四肢を切断された少年と、顔を潰された男に変わっていた。女性の屍体は、準男爵の娘、16歳のエレインであることが判明した。エレインは妊娠を儚んで、ヒ素による服毒自殺に及んだのだった。

エレインに関する謎は決着がついたが、手足を切断された少年と顔を潰された男の正体は?少年の手足が切断された理由は?と、謎は尽きない。

ダニエルの兄である内科医のロバートは解剖教室の経営者である。ロバートは、上流階級の患者しか相手にしない金の亡者で、ダニエルたちを危機に追い込むような胡散臭い行動をとる厄介な存在なのだ。

解剖教室のハンサムな一番弟子のエドワードや、解剖の写生を一手に引き受ける天才絵書きのナイジェルらの素性や行動が描かれるにともない、謎は少しずつ解けていくが、新しい謎が出てきて読者は煙に巻かれるのだ。

17歳のネイサンの詩人としての才能に目をつけた仲買人のエヴァンスは、ネイサンが羊皮紙に古語で書いた古詩集を、古書の稀覯本として売ろうと企んだ。さらに、エヴァンスは、ネイサンに詩を書かせ儲けようとネイサンを監禁した。
エヴァンスは株価操作を行い、市長や議員などの有力者に多大な利益をもたらして、見返りにうまい汁を吸っている人物である。

ナイジェルとエドワードは、ネイサンの自殺の痕跡を隠すために左手を切断したが、左手だけでは、偽装がバレてしまうと両手足を切断したのだと打ち明けた。
弟子たちは、赤貧に甘んじるダニエル先生をいたく尊敬していて、解剖の標本がどうなるのか、それを守ることが使命だと考えている。

真相が見えてきても事態はひっくり返り、行き着くところが見えないまま、ストーリーは進んでいく。
18世紀前半のロンドンというなじみの薄い舞台設定が、違和感なく受け入れられるのは、著者の巧みな筆の力による。さらに、人体解剖という特殊なテーマが扱われていて、舞台設定と相まって幻想的な雰囲気が醸し出されている。→人気ブログランキング

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