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『ルポ トランプ王国 ーもう一つのアメリカを行く』 金成隆一

著者は朝日新聞社ニューヨーク支局の特派員。2015年から1年間かけて、14州150人にインタビューを行って書き上げた。

トランプは発言がめちゃくちゃで、見ている分にはおもしろい。アメリカの識者やメディアが指摘したように、年内には人気が陰って選挙戦から脱落するというのが、大方の識者というか世界中の見方だった。それが、蓋を開けたら下馬評を覆したのだ。

インタビューの中でペンシルベニア州のフェンス工場で働くシングル・ファーザー(38)の言葉が、トランプに投票した人たちの本音を表わしている。
彼はオバマとは正反対で下品なやつだ。でも思っていることを正直に言う。これが魅力なんだ。・・・あいつは権威のあるやつにもひるまず、やりかえすカウボーイ。本音むき出し。エリートが支配するワシントンを壊すには、それぐらいの大バカ野郎が必要だ。1期4年だけやらせてみたい。

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)
金成 隆一
岩波新書 2017年2月
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2016年と2012年の大統領選挙の選挙結果を比較すると、前回民主党が勝利し、今回トランプが勝った州が6つある。オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、アイオア、フロリダ、である。このうちフロリダ以外の5州は、5大湖周辺の通称「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」に全体もしくは部分的に含まれる州である。
従来型の製鉄業や製造業が栄え、高卒のブルーカラー労働者たちが、ミドルクラスの生活ができたエリアである。なにも考えず、民主党を支持してきた人たちだったが、今回トランプ支持に回った。これがトランプ勝利の原動力となった。

真面目に働いてもミドルクラスから滑り落ちる。そんな不安や不満は、ラストベルトだけのものではない。NAFTA(北米自由貿易協定)により企業が工場を外国に移す。
学歴がなくとも真面目に働けば食べていけた社会であるはずなのに、後からやってきたヒスパニックが低賃金を武器に仕事を奪っていく。さらに製造業では、不法労働者に職を奪われる。

トランプの公約は、イスラム圏からの入国規制、TPPからの離脱、オバマケアの撤廃、メキシコ国境の壁建設、大規模減税やインフラ投資である。このうち、イスラム国からの入国禁止は裁判所が差し止めし係争中である。オバマケアの撤廃は身内の共和党員の反対で実現不可能となった。メキシコとの壁、減税・インフラ整備は予算の問題で実現は難しいとみられている。唯一、TTPからの離脱だけが実現している。

トランプは選挙期間中、人種だけでなく、イスラム教や女性、身体障害者など、自分と異なるあらゆる属性の人々を侮辱する言動を繰り返した。さらにKKKに対する非難を拒否した。

著者はトランプ政権の政策の行き詰まりによって支持者離れが起こったときに、トランプのこの反知性主義や白人至上主義により、アメリカが危うい方向に進むのではないかと危惧している。最悪の場合、どこかの国と戦争を始めるということもありうるとしている。このことは世界中が密かに懸念していることだ。→人気ブログランキング

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