ハツカネズミと人間 ジョン・スタインベック
『アルバート、故郷に帰る』のなかで、主人公の夫婦が工場のストライキの現場でジョン・スタインベックに出会う。また、スティーヴン・キングの『スタンド・バイ・ミー』(新潮文庫)の前説に、中篇集を発刊する経緯が書いてあって、スタインベックの『ハツカネズミと人間』を下敷きにした作品を描いたことがあると書かれている。
それで本書を読んでみることにした。
まるで舞台劇のように場面と登場人物が変わる。
登場人物の立場や役割がはっきりしているところも、舞台劇風である。
ハツカネズミと人間 ジョン スタインベック /大浦暁生 新潮文庫 1994年 |
ジョージは体が小さいが賢い、レニーはでかくて働き者だが利口でない。ふたりの夢は農場を持つこと。レニーはウサギの毛の感触に魅せられている。レニーがハツカネズミを撫でているうちに死んでしまうが、1週間も捨てられないでいるところを、ジョージにたしなめられる。
ふたりは小さい頃からの付き合いで、利口でないゆえに、なにかと災難に巻き込まれ勝ちなレニーの面倒をジョージがみてきた。
ふたりは農場の渡り労働者として、ある農場に雇われた。
農場主の息子カーリーは、立場を嵩にきていばり散らし、雇い人を殴る機会を狙っているようなヤクザな男である。その新婚の妻が気の多い女で、機会があれば従業員に色目を使っている。
ジョージとレニーは、この農場にいると揉め事に巻き込まれそうだから、給料を手にしたらさっさと出て行くことにした。その判断は正しかった。夫婦が絵に描いたような疫病神なのだ。
仕事で右腕をなくしたキャンディ老人は、保証金をもらい、飯場の掃除して暮らしている。いつものように、ジョージとレニーが農場を持つ夢を語っていると、キャンディ老人が話しに加わり、農場を買う金の一部を出すという。三人は夢を語って盛り上がった。
そこに、カーリーが現れてレニーに難癖をつけ殴りかかる。レニーはカーリーの手を握り潰してしまう。
農夫たちが蹄鉄投げに興じているときに、レニーは黒人の部屋に上がり込んで話し込む。蹄鉄投げに加わらないキャンディ老人も加わって話をしていた。そこに、カーリーの妻が現れレニーを誘惑する。レニーは髪に触らせてもらっているうちに、エスカレートして、女の首の骨を折って殺してしまった。
逃亡したレニーを追うカーリーと農夫たちの先頭にはジョージがいた。
早々とレニーを見つけたジョージはレニーに優しく話しかけ、背後から首の付け根に狙いを定め銃をを撃つのだった。
ジョージはわかっていた。農地を手に入れることなど、実現不可能な絵空事であることを。→人気ブログランキング
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