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『サイコパス』 中野信子

サイコパスとはどんな人物か?
ありえないウソをつき、不正を働いても平然としている。ウソがばれても、恥じるそぶりを見せない。殺人や詐欺事件をおかしたにもかかわらず、まったく反省の色を見せない。外見は魅力的で社交的で、トークやプレゼンテーションは立て板に水で、抜群に面白い。だが、関わった人は騙されてひどい目にあう。性的にも奔放であるため、色恋沙汰のトラブルも絶えない。経歴を詐称したり、過去に語ったことと反対のことを平気で主張する。矛盾を指摘されると、「そんなこと言っていない」と涼しい顔で言い張る。というような厄介な人物のことである。

サイコパス (文春新書)
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中野信子
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サイコパス(Psychopathy)とは、連続殺人犯などの反社会的な人格を説明するために開発された診断上の概念であり、日本語では「精神病質者」と訳されている。『精神障害の診断と統計マニュアル』では、「反社会性パーソナリティ障害」に相当する。
カナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアによれば、男性では0.75%、アメリカの研究者によれば、人口の4%。この差は診断基準の違いによる。

サイコパスは顔の横幅が広い。ある集団実験で、顔の横の比率が大きいほどズルをする確率が高かった。テストステロンの濃度が高いほど顔は横に広くなる傾向があるという。
心拍数が低くしかも上がりにくい人の方が、反社会的行動をとりやすいとされる(→『言ってはいけない』>橘 玲 新潮文庫 2016年 )。
サイコパスは『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士のようにIQが高いと思われがちだが、平均ではそういうことはなくむしろ低い。

サイコパスにも種類がある。「捕まりやすいサイコパス」、つまり危険でも不安を感じない「負け組サイコパス」と、「捕まりにくいサイコパス」、いよいよ危険というレベルになると不安を感じる「勝ち組サイコパス」に分けることができる。
「負け組サイコパス」は、犯罪を犯し刑務所に収監されリストアップされる。「勝ち組サイコパス」をどうやって見つけ出すかが問題である。
『暴力の解剖学』の著者・エイドリアン・レインは、臨時職業紹介所に頻回にやってくる人に狙いをつけた。サイコパスは刺激を求め、あるいは組織の中でうまくやっていけずに、短期間に仕事を転々としているはずだと推測した。臨時職業紹介所に頻回にやってくる人のうち、24.1%が反社会性パーソナリティ障害であり、そのうち1/3がサイコパスの傾向の強い人だったという。

脳の血流動態を調べることができるfMRI(核磁気共鳴機能画像法)によると、サイコパスは海馬に機能低下を認め、また、後帯状回の機能不全が認められるという。後帯状回は悲しかった嬉しかったといった情緒的経験を蓄積するところ。脳梁にも一般人と形状の違いがあるという。

家庭環境が安定していようと不安定であろうと、サイコパスが最初に姿を現すのはほぼ14歳であり、健全な家庭環境に育っても、サイコパスは環境が歯止めにならないという。
アメリカの犯罪学者ロバート・マーティソンがそれまでに実施された200以上の犯罪者治療についての論文をレビューし、「サイコパスには何をやっても効果がない」と結論を下した。

著者は、サイコパスは人類の歴史に貢献したとしている。
人類はアフリカで誕生後、短期間に急速に分布域を広げた。リスクを恐れず、未開の地への移住を試みた先祖たちの中には、サイコパスがいただろう。大航海時代の探検家やアメリカ西部を開拓していった人たちのなかにも、恐怖や不安を知らないサイコパスがいただろう。率先して危険を顧みずに行動したサイコパスがいたからこそ、普通の人たちが鼓舞され、追従できたのだろうという。
著者がサイコパスとしてあげる著名な人物は、織田信長、毛沢東、ピョートル大帝、ジョン・F・ケネディ、ビル・クリントン、スティーブ・ジョブス、マザー・テレサ、ドナルド・トランプなどである。

女性のサイコパスには、か弱さをアピールするタイプがいる。
たとえば、漫画研究会やアニメ同好会のようなオタク系サークルに、一見清楚そうで汚れのなさそうに見える女の子が入ってくることがよくあるという。これが「オタサーの姫」。
「サークルクラッシャー」は、サークルの中で複数の男と性的関係や精神的依存関係を持ち、それが原因でトラブルを起こし、集団を崩壊させてしまう女の子のこと。
「オタサーの姫/サークルクラッシャー」は必ずしもイコールではないが、弱者であることを演出をする。金品や物品、様々な便益を得るためのこともあれば、男が騙されて転んでいくのが楽しがるというケースもあるという。やっていることは詐欺師と変わらない。→人気ブログランキング

最近の脳科学分野の劇的な進歩により、さまざまなことが明らかにされている。
たとえばフロイトの業績は科学的に証明できない。いまではトンデモ科学呼ばわりする人もいるという。

ヒトは「いじめ」をやめられない/中野信子/小学館新書/2017年
サイコパス/中野信子/文春新書/2016年

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