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『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 』井上智洋

著者はマクロ経済学者。
2030年ごろから、先進国では深刻な雇用崩壊が始まると予測している。

シンギュラリティとは、コンピュータが全人類の知性を超える未来のある時点のことをいう。日本語では、技術的特異点や特異点と訳されている。
人工知能(AI)は、2020年代には人間ひとりの脳に、2045年には全人類のすべての脳に比肩するようになるという。つまり1台のパソコンで全人類分の脳と同等の情報処理ができるようになる。
これは、今までにいくつかの未来予測を的中させてきた、アメリカの著名な発明家レイ・カーツワイルが、著書『シンギュラリティは近いー人類が生命を超越するとき』(2005年)で論じていることである。

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書)
井上 智洋
文春新書 2016年7月 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

現在、世の中に存在する人工知能はすべて「特化型人工知能」であり、一つの特化された課題しかこなすことができない。一方、将来開発される人間のように様々な知的作業をこなすことができる人工知能は「汎用型人工知能」である。

では、社会はどうなるのか。汎用型AIに不向きな仕事の従事者と資本家以外は、職を失うことになる。職業を奪われる人の割合は90%と試算している。
資本家は効率の悪い人間を雇うより、効率の良いAIに仕事を回すだろう。汎用型AIを導入することで人件費はゼロに近づき、生産効率は飛躍的に良くなり、経済は成長すると予測している。もはや資本主義は終焉を向かえる。いわゆる「2045年問題」である。

著者はAIに奪われにくい仕事として、次の3系統の仕事を挙げている。
「クリエイティヴィティ系」は、小説を書く、映画を撮る、発明する、新しい商品の企画を考える、研究をして論文を書く、といった仕事。
「マネージメント系」は、工場・店舗・プロジェクトの管理、会社の経営者など。
「ホスピタリティ系」は、介護士、看護師、保育園、インストラクタなど。

では、職を奪われた人びとはどうやって暮らしていけばいいのか。著者はベーシック・インカム(BI)の導入を提案している。BIとは、政府がすべての国民に一定の金額を給付する制度のことである。財源は、莫大な利益を得るだろう資本家からの税金で賄う。

シンギュラリティは人類の進化の通過点なのか、それとも破滅への一歩となるのか。人類を待ち受けるのはユートピアなのかそれともデストピアなのか。そもそも著者が描く未来予想図の通りにことは運ぶのか。いずれにせよ、これまでの法則が通用しない時代が迫ってきているのは確かなことのようだ。→人気ブログランキング

→『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 』井上智洋 文春新書 2016年
→『未来型サバイバル音楽論』津田大介×牧村 憲 中公新書ラクレ 2010年
→『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』梅田望夫 ちくま新書 2006年

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